第14話
「俺と戦いたい奴がいるか?」
新は教壇に立つなり言い放つ。憮然と席に座っていたこころと黒は眉を潜める。
「は? あんた魔力無しじゃないの?」
「舐めるな。魔力なんて使わなくてもお前らなんて楽勝だよ」
吠える。その言葉に黒が目の前で強く手を握る。
「ちょっと頭が回るからって調子に乗らないで。……いいわ私が」
「いや、私がやるよ」
黒はこころを睨みつける。黒はひらひらと手を振った。
「休みなさい。私より怪我ひどくてまだ治ってないじゃない」
「ふん! これぐらいなんてことないの。それに馬鹿にされたこと許せないもん」
机に拳を押し当て強く握る。黒は溜息。
「まあいいわ。好きにしたら神鷹さん」
「ありがとう黒。――新さん、私がやります」
「ああ、いいぜ。目にもの見せてやる」
新とこころはそれぞれアイリスの地下にある競技場に立った。こころの手には競技用の銃剣。新の手には茶色の木刀が握られていた。
「はぁ!? あいつ馬鹿じゃないの?」
管制室から見ていた黒が新の武器を見て顔を歪める。
新はそんな黒の表情を試合場から一瞥。あんま良い気分じゃねぇな。見世物かよ。こころに向き直る。
「おいっ! クソガキ!」
「神鷹こころです。両親から貰った格好いい名前があります。神鷹こころ」
「ああ、そうかよ。さっさとかかってこい。黒、戦闘開始の合図を頼む」
黒が置かれていた説明書を見ながら、覚束ない手付きでコントロールパネルを操作する。競技場の起伏が変形する。山の連なり。民家を模した白いキューブ。こころの姿が視認できなくなった。新は頼りない木刀を握った。
「ルールは先に三発攻撃を当てた方の勝利。攻撃が当たった三秒間は無敵になる。――戦闘開始」
新は地を蹴って山を登る。本当だったら遠距離でやりたいが、生憎木刀じゃ無理だ。接近するしか無い。山を登り下りしていると遠方に移動しているこころを発見。さっと地面に顔を伏せて起伏に隠れる。そのままジリジリと匍匐前進。こころは周囲を警戒しながらうろちょろと移動している。側を通りかかる。
「しねぇ! このクソガキ!」
左手で地面を押して跳び上がる。こころの驚愕に満ちた表情が見えた。右手で木刀を一閃。こころは銃剣の銃身で打撃を受け止める。反撃させまいと連撃。こころは呼吸を整えながら木刀の連打を捌き銃口を突きつける。
「喰らえ!」
こころは叫び、引き金を引く。銃口から熱線が散弾の如く放射。新は咄嗟に身を捻る。間一髪で散弾を回避し、後ろに跳ぶ。
「あれを避けますか!?」
「当然だろ」
嘘だ。滅茶苦茶やばかった。あれ散弾も出せるのかよ。まったく予想してなかった。それに、魔力がないとやっぱり体の動きが違う。ハンデでかすぎだろ。再び側面から回り込み、木刀で薙ぎ払う。こころはさっきので懲りたのか、バックステップしながら射撃し続ける。新は何度か紙一重でそれを回避する。追い詰められている。体が遮蔽物のない平野に晒される。こころが引き金を引いた。雨のように光線が降り注ぐ。チッ! 無理だ。回避を捨てて直進。ブザー音が反響。無敵時間を利用して突き進む。一足でこころの懐に入り込む。
「なっ!」
「舐めんな!」
踊るように連撃。横に薙ぎ払い、蹴りを交える。再びブザー音。自分の肩に着弾し光を放つ熱線を見る。くっそ、駄目か。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄叫びをあげて舞い続ける。木刀を掬い上げるように一閃。こころの銃剣が上に跳ね上がった。こころの顔が驚愕に満ちる。流石に一発ぐらいはくれてやるよ。ただの意地だけど。新の放った斬撃がこころの体の腹に直撃。唾液を吐き出し吹き飛んだ。地面を転がる。こころはすぐに体勢を立て直して立ち上がる。顔を俯かせている。なんだ? プライドでも傷つけられたか。こころはギンと鋭い目つきで新を睨みつける。
「負けません。貴方には絶対に負けません!」
地面を蹴り接近。銃剣を構え。振りかぶる。新は木刀で正面から受け止める。コイツら魔法少女はやっぱ筋力も化け物か! 腕が軋み悲鳴をあげる。突然、重さが消えた。こころは軸足で地面を踏みしめ、右回りの回転蹴り。新の腹が殴打され、体が宙を舞った。最後のブザー音が聞こえた。
「ふんっ! やっぱ雑魚ですね。雑魚です。雑魚雑魚です」
そのまま背を向けて競技場から出ていく。悪かったな雑魚で。
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