第12話

「で、見事今日の講義はなくなったわけ?」

 陽花は新の机の上にコーヒーを置く。新は不機嫌そうな顔をしながらそれを啜った。

「そうだよ。俺の判断ミスだから給料は減らしといていいぞ」

 呆れたようにため息をつく。

「別にそんなことで減らしたりしないわよ。やっぱりあの子達の動きは荒い?」

「ああ、全然ダメだ。一人ひとりの能力はともかく集団戦闘と戦術眼がない。これで人の話を聞かないんだからな」

 大きく溜息。

「やっぱり貴方を採用して正解だったかも」

「何処がだよ。完全にガキどもに嫌われたぞ」

「それで良いのよ。私は優しいお姉さんで通ってるから言いづらいし、貴方ほど戦闘の勘もないから」

「代わりに技術と頭脳はカンストしてるけどな」

 新は肘をついて言う。

「……あの子たちのこと知りたい?」

「何のためにだよ?」

「教師として当然のことでしょう。子供のことを調べるのは?」

「生憎、俺が今まで見てきた教師は適当に子供をあしらって馬鹿にする奴らだった」

「捻くれてるわね」

「うっせぇ」

 陽花は頭を横に振るう。少しだけ息を吐いた。

「神鷹こころ。月京都で代々続いてる神鷹神社の娘よ。性格は天真爛漫で純粋。ちょっと負けず嫌いなのと正義感が空回りするのが短所。好きなものはチョコレートケーキ。好きな人はおかめ仮面」

 新の顔を陽花が見る。一瞬だけ顰められた。

「魔術の属性は炎と光の二属性。ダブルよ。ただ今まだ光を上手く扱えないから熱線ばかり撃ってるわ。マジックロッドは銃剣型の【焔光】。ちなみに、魔法少女になった理由はおかめ仮面に助けられたからだそうよ」

「…………夢見がちな馬鹿だな」

「そうかも知れないわね。能力についてはどう思う?」

 不服そうに顔を逸らす。

「強くなるんじゃないか。ダブルってだけでそれなりにメリットがある。動きも最低限悪くない。沸点の低さは問題だがな」

「そう、それは良かったわ。二人目。海原黒。両親は漁師だったけど、災害に街が襲われて殺されたわ。それから叔父叔母の家に住んでたみたいだけど、私が採用したときにどうしても一人暮らしが良いと言うから。今は家を借りて一人暮らし。性格は自信家で攻撃的。短気なのが欠点ね。身体能力は高いけど魔力の扱いはあまり上手くない。魔術属性は氷。あまり使っていないわね。魔力の弾丸で戦うのが基本スタイル。武器は二丁のサブマシンガンの【双竜】。接近戦では無類の強さを誇るわ」

「接近戦、だけの間違いだろう。近づかなきゃ何も出来ないんじゃ戦術の幅が狭すぎる」

「最後は、……古暮渚。一応私の遠い親戚よ。性格は無口で無表情。ただし褒められると驚くほど積極的に成るわ。可愛いでしょ。魔術属性は闇。武器はスナイパーライフルの【帳】。圧倒的な魔力量が武器。というか魔力量で射撃精度を誤魔化している節があるわ」

「ぱっと聞いて感じ、渚が一番強い。他の奴らと違って魔力量が高いからな」

 席を立つ。陽花は新の瞳を見つめる。

「育てみたくなった?」

「いやまったく」

 そのまま部屋から出ていった。

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