第2話 ねこを助けた男子高校生
福宮光太郎は下校途中だった。
もう5月だというのにずいぶんと涼しい風が吹いていた。通学路にはこの時間、光太郎と同じブレザーの制服を着た生徒たちが歩いている。
中には男女でカップルになって帰っている者も…。
しかし、そんなものは光太郎の目には入らなかった。今は自分の所属する野球部のことで頭がいっぱいだ。
「みんな、どうしちゃったんだろうなぁ…」
部は急速にやる気を失っていた。
理事長だか理事会が新しくなって方針が変わるという噂は聞いていた。
元々、光太郎の通っている新條高校は野球にサッカー、ソフトボール、卓球、陸上、水泳と多くの部が全国大会に出るなど活躍し、スポーツや部活動が盛んなことで知られていた。
それが二年ほど前から大きく方針を変え、県内でも有数の進学校を目指すことになったらしい…。
それで一番わりを食うことになった野球部は、去年と、それから今年の新入生と如実に入部する生徒の数が減っていた。
しかし原因はそれだけではなくて、強豪のライバル校の存在や絶対的エースの不在なども重なっていた。
それが元で、数名のレギュラーの部員も最近じゃ練習に出たり出なかったり、という状況に陥り、部は半分死んでいるような状態だった…。
それでも光太郎は野球が好きだった。今の野球部が好きだった。
だから、このまま野球部が潰えたとしてもしょうがない…だけど最後の大会は、今いるみんなで、もう1回がんばろーって、そういう気持ちにならないかなって…そんなことばかりを願っていた
通学路になっている広い歩道の外側には木がきれいに並べられている。
光太郎はぼんやりと、その車通りのない道を歩いていた。
すると…何やら後ろの方で女子生徒数名の声が聞こえた。
それは悲鳴とも違うが何か事件でも起きていることを思わせるざわめきだった…。
光太郎は思わず声のした方を振り返る。
すると女子生徒の指さしている方向、道の真ん中に奇妙な生き物がいるのが見えた。
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