第6話 Clock-5

 午前1時。

 真夜中の商店街。

 寝静まったある食堂。

 その家の静寂を破る音が鳴り響いた。


「ピンポーン」


「うう・・・ん・・・」

 その家の主人は、まだ夢うつつ。寝返りをうつ。


「ピンポーン」


 すると再度鳴る。

 ようやく、眠りから引き戻されつつあった。

 だが、枕もとの時計を見て・・・


「なんだよ・・・こんな真夜中に・・」


 時間を見て、また布団に潜り込む。

 すると、その様子がわかってるかのようにさらに追い打ちをかけてきた。


「ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン」


「ちょっと、あんた。様子を見てきておくれよ」

 隣で寝ていた妻が主人に不機嫌そうに声をかけた。


「なんなんだよ、いたずらにしちゃ悪質だな。警察を呼ぼうか」


 寝ていたところを起こされて、主人は怒りを覚え2階の寝室を出て階段を降り玄関に向かった。


 玄関の扉を開ける。

 すると・・そこには、誰もいなかった。


「ちくしょう!」


 荒々しく扉を閉める。

 本当に警察に電話しようか。


 そう思いながら、水を飲もうと食堂の厨房の扉を開けた。



 ぶわぁ!



 扉の向こうから、焦げ臭いにおいと真っ黒な煙があふれだしてきた。


「な・・・なんじゃこりゃ!!母さん!母さん!た・・・たいへんだ!!」


 大声で怒鳴りながら、あわてて消火器を探す。

 2階から降りてきた妻は、やはり慌ててスマホから消防署に電話をしたのであった。



 通報によって駆け付けた消防によって、火事はすぐに消し止められた。

 幸い、誰もけが人はなくぼや騒ぎで収まったのが幸いだった。


 騒ぎが収まった後、主人は思った。

”ありゃ、だれかが煙に気が付いて呼び鈴を押してくれたんだろうか。それならそうと言ってくれればいいのに”





「ふあぁ」

「英治兄ちゃん、眠そうだよ。ゲームとかして夜更かししてたんじゃないの?」


 朝食の食卓。にやにやとからかってくる美緒。


「違うよ、勉強してたんだよ」


 そう答える英治は、誰から見ても眠そう。



 昨晩、自宅に帰ってくると2時半過ぎであった。

 それから、例のスマホでニュースを確認。ニュースを検索し、商店街でぼやがありけが人がなかったことを確認。ようやく寝たのは3時。


 とはいえ、勉強していたのは嘘ではない。

 その事件の前には図書館から借りてきた本を読んでいた。

 電子工学や物理学や量子力学。

 

 未来の情報を得ることができる・・・その原理を知りたくて、数多くの本で調べているのである。

 今のところ、手掛かりは何もない。だが・・・英治は、いつかはその原理を解き明かそうと心に決めていた。


「ふうん、高校って大変なんだね。無理しちゃだめだよ」

「はいはい。ふぁぁあ」


 小学生に心配される高校生というのもどうなんだろう。

 そう思いながら、英治は再び欠伸をするのであった。

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