第3話 Clock-2
英治は机の引き出しかを開け、去年まで使っていたスマホを取り出した。
SIMカードの入っていないスマホ。WIFIでまだ使える。
手に入れた部品は、この現在は使っていないスマホのために購入したのだ。
まずは、ベンチマーク測定アプリで現在の速度を測定する。
やはり、旧型だけあって数値は最新のものに比べて見劣りするものである。
それが、購入した部品でどこまで向上するのか・・・。もちろん怪しげな部品なので期待はずれに終わるかもしれない。
それでも、未知なものに対する期待でワクワクしていた。
まずはヒートガンでスマホの背面を温める。
その後、吸盤が付いた器具を背面に張り付け、引っ張る。すると、ぺりぺりと背面のパネルがはがれていった。
まずはバッテリーをコネクタを外してから取り出す。
そして、メイン基板を覆っている金属製のシールドカバーを注意深く外していく。
シールドカバーを外すと、2センチ四方くらいのメインチップが現れた。
今回、部品を購入した際に送られてきたPDFファイルの説明書によると、このメインチップの上に部品を置けばいいらしい。
透明なプラスチックケースを開ける。ピンセットにセロハンテープを粘着する方を外側になるように巻き付け、黒い部品を引っ付けて取りした。
「これ・・・置くだけで、どうやって固定するんだろう?」
まあ、うまく固定できないようであれば接着剤をもってこよう。
説明書に書かれた指示に従い、部品の方向を間違わないように慎重にメインチップの上に置いてみた。
すると、電源もつないでいないのに、甲高い音が響いた。
ピィィィィィ・・・・・
そして、黒い部品の側面から無数の銀色に輝く小さな爪状のものが出てきてメインチップにがっしりと食い込んだ。
どんな仕組みになっているのか全く分からない。
だが、その部品は完全にメインチップに固定されたのだ。
「な・・なんだよこれ・・・」
まったく意味がわからない。
バッテリーを外しているので、電気的な仕組みではないはずなのだ。
本当に謎な部品である。
とりあえず、まずは動作確認をしようと思い、バッテリーをつないで電源を入れてみた。シールドや背面パネルは外したままだ。
スマホは、通常通りメーカーのロゴが表示された後に普通に立ち上がった。
まずはベンチマーク測定アプリを立ち上げて数値を確認しようとした。
だが
いつまでたっても数値が表示されない。
「あれ?うまく測定できないや」
ほかのアプリをDLして測定しようとしたが、同様であった。
「ううむ・・・一体何なんだろう?速くなりすぎた?」
インストールしてあったアプリをいろいろと起動したりして、動作を確認する。
原因は不明だが、速度の測定はうまくいかないようだ。しかしながら、以前に比べてサクサクと動作するようになった実感はある。
通信がうまくできるか、ブラウザを開いてニュースサイトを表示させてみた。
特に動作に問題はなさそうだ。
トップニュースに”サッカー、チャンピョンシップ大会 激闘の末に**が優勝”の記事が表示される。
「ちゃんと動いているみたいだけど・・・」
だが、何か違和感を感じた。
何かが変だ・・・
「あち!!!!」
スマホを持っている指がメインチップに触れた。ものすごい高温になっている。
やけどするぐらいの高温である。
慌ててスマホの電源を落とした。
放熱対策を考えなきゃな・・・明日は秋葉原にでも行ってヒートシンクでも買うか・・・・
その時、気づいた。
今日は金曜日である。
サッカーのチャンピョンシップ大会は・・・明日、土曜日の開催のはずであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます