第86話 検証①

 現道優と山田市太郎が退院してから数日後。

 山田市太郎はダンジョン管理省の一室を借りて、自分達の特殊能力について調べ合った。

 固体は魔力を有している鉱石や魔力が固体化している魔石などは少しの間なら触れる事ができ、その後魔石は消滅して、鉱石からは魔力が無くなった。

 液体などは回復液を利用する。液体に溶け込んだ魔力を調べる方法をとり、優が触ると魔力が霧散して回復液ではなくなった。

 気体に関しては優と市太郎はどのような方法で調べるかを相談する。相談の結果、攻撃魔法に手を入れて魔法が消えるかという手段を取った。

 ダンジョン管理省所属の探索者に手伝ってもらい、魔法を発動してもらう。その魔法に優が触るという実験だった。

 火の玉で相手を焼き殺す魔法で実験する。火の玉の温度を限りなく低くしてもらい、水を用意して火の玉に触る優。結果は優が魔法に触ると火の玉は消えてしまった。熱すらも感じず火の玉は優が触ると消えてしまった。

 他にも魔法で発動する水の玉、電撃、毒魔法、回復魔法、強化魔法全部確認してみると優と市太郎にはまったく魔法が効かない事が分かった。


「実験の結果、私達が触ると魔力が消えるという事が判明した」

「利点は攻撃魔法が効かない。欠点は回復魔法や強化魔法が効かないとあるね」


 二人はいろいろと実験して魔力を消す証明を立てた。証明した実験を市太郎が管理省に伝える。


 次に血液を調べた。優の血を浴びたモンスターが消え去った事で、血液にも特殊な能力が備わっているのではないかと確信していた。

 優と市太郎の血液を採取して、魔石に垂らす。すると魔石があっという間に消え去った。


「……凄い威力だね」

「そうだね。魔力の固体は消え去るのに時間がかかるけど、血だと一瞬か……」


 検証の結果、気体から固体は時間がかかるが、液体から固体は一瞬だと分かった。しかし、


「血液が凝縮する前までしか使えないね……」

「そのようだね。血液の利用時間が一分くらいとみて良いだろう。しかしこれも面白い結果が出た」


 喜んだ市太郎だが、急に考え直して「危険かもしれない……」と言う。


「私達の血を悪用しようとする者が居るかもしれない。関係者以外は口外しない方が良いだろう」

「……そうだね。大量の血は僕達も死ぬかもしれないしね」


 大量の血を使った攻撃法は自身の最後の手。もしくは相打ち狙いの逆転法。さすがに簡単には使えない。


「……血液以外の液体も可能なのかな? 唾液とか、胃液とか」

「……調べてみよう」


 結果、血液の方が唾液や胃液よりも効くと事が判明した。その違いは後日検証する事にした。


「次はゴースト系のモンスターを相手にしてみよう」

「魔力の塊のようなモンスターだね。分かったよ」


 義手の具合を確認しながら承諾する優。

 優と市太郎は義手義足を付けており、主な実験は優が行う事にしている。そして優が安全を確認した後に市太郎が行うという方法に決まっている。

 市太郎も最初の実験に参加しようと発言したが、優が「最初は僕に任せて。市太郎君は実験を視てほしい。安全の為に」と。市太郎も優に人体実験の様に危険な目に遭わせたくないが「僕が適任だよ。高校卒業してずっと探索者だったんだから。経験豊富な僕に任せて」と自信を持って言う。

 少し前までのネガティブな優が、変わった様に明るく強くなった。市太郎が信頼してくれているから優も頑張ろうと思い、性格が元来の明るさを取り戻しつつある。

 ダンジョン管理省が管理しているゴースト系のモンスターしか出現しないダンジョン。

 護衛の探索者達と一緒に入る優と市太郎。

 前衛に優が、中衛と後衛に護衛探索者と市太郎と続く。

 優にゴーストが襲ってくるが優に触れると消え去ってしまった。物理攻撃が効かないゴースト系のモンスターは優と市太郎に触ると消え去る事が判明する。


「市太郎君。ついでにこのダンジョンの鉱石を取って帰ろうか」

「それは良い考えだ。鉱石の類なら少しくらい触っても問題無いからね」


 ゴースト系のモンスターダンジョンは魔力が含まれる鉱石の多く取れる。しかしゴーストの多さから鉱石を取る事が難しい。しかし優と市太郎の二人ならゴーストを無視して鉱石を取る事が出来る。

 二人はダンジョンで取れた鉱石を管理省に持って帰る。管理省に喜ばれた。

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