第37話 トラブル発生

 夕方までアミューズメントパークで遊び楽しんだ優達クラスメイトは、名残惜しいが家に帰る者達、寮に帰る者と別れて帰路に着く。

 優と市太郎は同じ寮なので一緒に帰る事にした。


「今日は楽しかったですね。お友達も増えましたし」


 綾乃も寮で夕食を取って実家に帰るらしい。両親から市太郎と一緒に夕食を取って良いと許可を得たそうだ。

 市太郎と綾乃が待ち合わせ場所に来た高級車に一緒に乗る優。初めての高級車に少し緊張をする。


「そうだね、私も楽しかったよ。優君も市原君達と仲が良くなったみたいだね」

「いや、普通だよ! 普通!」


 ベンチで市原輝美と二人で会話していたら距離が近づいた様だ。市原輝美と距離が近づいたので二人の幼馴染である白川と江戸川との距離も近づく事になる。そして山本達と一緒に行動したりして、優は楽しい時間を過ごした。


「中園様が写真を編集して上げるって言っていましたし。楽しみです」


 新聞部の中園栞はクラスメイト達の写真を撮ってカメラマンもしていた。綾乃とも仲良くなりライン交換もして市太郎との写真を楽しみにしていた。

 信号で車が止まっている時にふと、窓を見ると見知った人が居た。同じ寮に住む日野ひまわりを見つけた優だった。


「あ、日野さんだ」


 優の言葉に市太郎も窓を見る。なにやら言い争っているようだった。


「……ちょっと事情を聞いてみよう」


 と言って市太郎は車から降りて日野の所へ行く。優も一緒に行く事にして、綾乃は「近くに車を止めておきますので」と言う。

 優は市太郎に遅れて車を降りて日野の所へ向かう。

 日野は誰かと言い争っていて、市太郎が二人の間に立った。日野の近くに倒れている男性がいる。


「違うって! オレはこいつを止めたんだよ。お前も見ろ、これを!」

 

 日野が指をさしている方には、倒れている男性と側には青色の鉱石が落ちている。


「こ、この鉱石は!」


 日野が指さした鉱石に、市太郎は驚く。


「こいつはオレの後輩だ。高校辞めて上京して変な仕事をしているってダチから聞いてな。今日はこいつを捜していたんだ。やっと見つかって話しかけようとしたら、いきなり男が襲ってきてよ、後輩に訳を聞こうとしていたらお前達が来てよ」


 気絶している男性を見る市太郎。そして鉱石を確認する。


「……それもこれは普通の鉱石ではない。特殊な精製で麻薬の原料になるダンジョンの鉱石だ!」

「なんだそりゃ? 初めて聞いたぞ」


 優も青い鉱石を見る。……これが麻薬の原料かと思いながら見ていたら、急に刃物を突きつけられたような感覚に背筋が凍るような気持ちになる。ダンジョン探査訓練で感じた嫌な予感よりも数段上の感じだった。

 周囲を見渡す優に、市太郎が優に言った。


「どうした、優君?」

「すごく嫌な予感が……」

「日野君、そこに倒れている男性を後輩君と一緒に運んで来るんだ! 安全な場所に行くぞ。優君も早く!」


 市太郎は皆を綾乃が待っている車に乗せて「ダンジョン管理省に!」と言って行き先を変更した。


「綾乃嬢、済まないが夕食はキャンセルになった。申し訳ない」

「分かりました。気にしないでください」


 阿吽の呼吸の市太郎と綾乃。それに対して日野が「どういう事だ! 説明しろ!」と怒鳴る。優と日野の後輩は皆の様子を眺めていた。


「日野君の後輩君を襲った男性が持っている鉱石だが、特殊な麻薬で、ダンジョン管理省でも調査しているモノなのだ」

「それはさっき聞いた! 今の状況を説明しろ!」

「この鉱石はダンジョン管理省でも知っている者は極少数だ。そして先ほどの現場は危険だと感じたので安全なダンジョン管理省に向かっている。ところで日野君の後輩君。この男性は知り合いかい?」


 首を横に振る日野の後輩。そして、


「君はこの鉱石から精製された麻薬を摂取した事があるかい?」


 再度、首を横に振る日野の後輩。


「それは良かった。この鉱石から作られる麻薬は依存性が高く、副作用が酷い。一回でも使用したら廃人直行の危険で厄介なモノだ。彼の様に……」


 市太郎の言葉に車に乗っている全員が驚き、倒れている男性を見た。

 優は『東京は楽しい施設があるけど危険な場所だな』と真剣に思った。

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