第25話 ダンジョン見学会③(プロローグ①の続き)

 案内人の探索者達が「生徒は逃げろ!」と叫ぶ。

 急に現れたモンスターに優たち生徒はパニック状態だった。

 いち早く冷静さを取り戻した市原輝美は幼馴染の二人に「逃げるわよ!」と言って二人の手を握り走り出した。

 それに気づいた山本健斗、中武修、相沢誠二も中園栞と輝ノ島アリサの手を引いて市原達と同じ方向へ逃げる。

 優は殴られた衝撃で地面に倒れて、モンスターが現れパニック状態だった。そして案内人の探索者の手を借りて起き上がり「早く逃げろ!」と怒鳴られた。

 そんなときに優と探索者の前にゴーストが現れる。

 ゴーストは探索者に襲いかかるが、探索者は横に飛んでゴーストの攻撃を避けた。

 そんなゴーストは探索者の後ろにいた優に当たりそうになる。優は目を瞑って痛みに耐えようとしたが、いつまでも痛みがこない。

 恐る恐る目を開けるとゴーストはいなくなり、探索者は目を点にして驚いていた。


「坊主、お前、アンチマジック能力者か!?」

「は、はい。魔力量ゼロです」


 優は反射的に言うと探索者が喜び、広場全体に聞こえるように言った。


「お前ら! アンチマジック能力者が居る! この子を盾にして戦うぞ!」


 探索者の声を聞いて優の居る場所に来る探索者達。


「この子がアンチマジック能力者なのか!」

「マジか! 初めて見たぞ!」

「希望が見えたぞ!」

「貴方が頼りよ! 頑張って!」

「全員、壁を背にしてこの子の後ろに移動しろ! 坊主! お前が頼りだ!」


 壁際に立つ探索者達は優を盾にする。子供の後ろに隠れる探索者達に優は叫んだ。


「ちょっと! 僕がモンスターに殺されます!」

「坊主はアンチマジック能力者だろうが! ゴーストやレイスは坊主に触れたら消える天敵だ! あいつらは魔力を感知して襲い掛かる。オレ達の魔力を感知するが、その前に坊主に触って消えるって戦い方だ! 頼んだぞ!」


 優の後ろにいる探索者が肩を掴んで移動できない様にする。本当に盾の様な扱いだ方だった。

 怖くなり手で顔を守りながら目を閉じる。

 襲い掛かるゴーストとレイスは優に触れると消えてしまった。


「マジでゴーストが消えているぞ!」

「人型マジックシールドだな!」


 探索者の声を聞いて目を開ける優だが、段々と襲ってくるモンスターに対して目を閉じなくなった。


「……でも子供を盾にするって、傍から見たら酷い光景ね」

「世間にバレたら探索者資格はく奪モノだな……」

「オレ達が生き残る為だ! 坊主! 頑張ってくれ!」

「そういえば坊主の名前は?」

「優です。現道優」


 恐ろしい顔の襲い掛かって来るゴーストやレイスは、優に触ると消え続け、慣れてきた優は自己紹介を出来るくらいの冷静さを取り戻していた。


「スゲーな。アンチマジック能力者って!」

「これはスカウトモンだぞ!」

「でもアンチマジック能力者はダンジョン管理省が管理するって噂だから無理だと思うぞ」

「日本に数人しかいないって話だしね。知り合いのコネでもないと勧誘以前に依頼だって無理よ」

「あの、僕はいつまで盾になっているんですか?」

「優君。ゴースト達が全滅するまでだ。すまないが私達にはゴースト達を退治できないんだ」

「でもあっちの人達はゴーストと戦っていますけど」

「あっちは別だ! ゴーストやレイスと戦うには強い魔力で攻撃しないと駄目だ! 魔力を帯びている魔剣を持っているとゴーストやレイスにもダメージを与える事が出来るし、魔法でも倒す事が可能だ。しかし今のオレ達はゴースト達と戦える装備も魔法も持っていない。それに」


 魔法を放っていた探索者がこっちに向かって走り出す。魔剣を振って戦っていた探索者も優の後ろに回る。


「これ以上の魔法攻撃は魔力が持たない。ギブアップだ!」

「オレも駄目だ! 魔剣の攻撃力が弱くて倒せない!」


 広場に残っているゴーストやレイスは優に近づき消滅した。

 モンスターが広場からいなくなり、生き残った探索者達は声を上げて喜び、その喜びを優の肩や背中を叩き肉体的打撃を食らい、優はモンスターの攻撃よりも痛い思いをした。

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