第17話 国際ダンジョン探索者協会の成り立ち
現在、近代歴史の授業中。教壇に立っているのは担任の車田先生だ。
内容は『国際探索者協会』が出来るまでの成り立ちだ。
「国際探索者協会はダンジョンが発生する前は『魔女狩りから善良な魔法使いと魔女を保護する会』と言われ、一般人には知られない様に隠された組織だったが、ダンジョンが発生して近代兵器では倒せないモンスターを、魔力を使ってモンスターを倒した事により世間に組織の名が広まった」
教師が黒板に書きながら説明する。一般人でも知っている知識だけど、詳しい内容や、年代は知らない者が多い。探索者高等学校ではより詳しい知識を学生達に教えている。
「最初のダンジョン発生、1999年の七月に世界に三ヵ所発生した。このときに軍隊が近代兵器を使ってモンスターを倒そうとしたが、魔力がこもっていないのでモンスターを倒す事が出来なかった。そしてモンスターは周辺建物を破壊し、人々を殺した。犠牲者は一般人軍人合わせて三万人、行方不明者は十万人と言われる」
優も知っている内容だけど、詳しい数字までは知らなかったので、犠牲者の多さに少し驚いていた。
「ダンジョンが発生した国は核ミサイルを使ってモンスターとダンジョンを消そうとした。モンスターは消滅できたが、ダンジョンは消滅出来なかった。そしてダンジョンから更にモンスターが出現している。核ミサイルの放射能汚染で土地は入る事が出来ず、モンスターは放射能に耐性を付けたと言われている」
更に教師は「そのダンジョンは現在も攻略できずにいて、最古のダンジョンと言われている」と説明した。
「話が逸れたな。そして更にダンジョンが発生して、人間は成す術が無いと思われた。だが、神は人類を見捨てなかった。魔力を使う事が出来る魔法使いや魔女が現れてモンスターを倒した」
「車田先生! 先生は神を信じているのですか?」
「都合の良い時だけ神を信じている。主に万馬券が当たった時だな」
生徒の質問に答える教師は続ける。
「世間から隠れていた魔法使いや魔女たちのお陰で、モンスターを駆逐し、ダンジョンコアを破壊した。しかし世界には次々とダンジョンが発生する。だから魔法使いや魔女達は世間に魔力の使用法、魔法を教授した。他にも魔力のこもった武具の作り方や回復薬等の作り方を世界に公開した」
「車田先生、どうして魔女や魔法使いは隠れていたのですか?」
「中世の魔女狩りを恐れて隠れて暮らしていた。魔女狩りについては中学校で習ったはずだから説明は省く。ダンジョンが発生した事で人間に魔力が感じられる事になり、魔力の使い方を世間に教えた組織が『魔女狩りから善良な魔法使いと魔女を保護する会』だ」
「先生、その組織名は誰が決めたのですか?」
「中世頃に組織名が決められたと伝わっているが、誰が決めたのかは分からない。もし命名者を発見したら世界的発見だな。ちなみにまだ発見者は出ていない」
組織名を省略しなかったのだろうか? 優はふとした疑問を思い浮かべるが、教師の説明は続く。
「魔力の使い方を知った人類はダンジョンを探索し、モンスターを倒した。ダンジョンで採取された植物や鉱石などで回復薬や武具を作り、ダンジョンから世界を守った。そして国際連合が『世界を守る為にダンジョンを管理する』と言って『魔女狩りから善良な魔法使いと魔女を保護する会』を国際連合の管理下に置こうとしたが、『魔女狩りから善良な魔法使いと魔女を保護する会』は非協力的だった」
「魔法使いや魔女達がモンスターを倒したときに、国際連合から差別的な仕打ちを受けたからですね」
「その通りだ。ダンジョンモンスターを倒す為に魔法を使った事で、国際連合や他国からバケモノ的扱いを受けた。そして『ダンジョンが発生した原因は魔法使いや魔女達のせいだ!』と根拠のない事を言ったが、反対勢力が『国際連合が何も出来ない事を魔法使いと魔女が救ってくれた』と反論した」
「車田先生、その反対勢力にも組織名は有るのですか?」
「反対勢力には組織名はない。基本的に魔法使いや魔女達から命を救われた人々、魔力の使い方を習っている人々だ。そして反対勢力の支援を受けて魔法使いや魔女から魔力の使用法を習った人達はダンジョンに入りモンスターを倒してダンジョンを消滅させる。そしてダンジョン内で採取した植物や鉱石を探索、ダンジョンコアを探索する事で『探索者』と言われ始める」
教師が「ここはテストに出るぞ!」と言ってチョークで黒板を叩く。
「そして年数が経つと探索者の人数が増え、探索者が集まりギルドを作り、探索者による魔法による犯罪が横行し始め、次第に国が探索者を管理できなくなった。警察や軍隊では探索者を取り締まるのは難しいからだ。探索者はモンスターを倒す為に身体強化魔法等で一般人よりも強く、銃よりも強力な魔法を使えるからだ」
探索者によって犯罪率は過去最大で、逆に一般人の犯罪率は過去最低と言う教師。今では探索者も一般人と同じくらいの犯罪率だが「探索者が横行していた時代があったんだな」と思いながらノートに書きこむ優。
「国際連合は魔女狩りから善良な魔法使いと魔女を保護する会に『探索者を管理する組織になってくれ』と頼み込んで『国際ダンジョン探索者協会』と名前を変えて、探索者を管理する事になった。これが国際ダンジョン探索者協会の成り立ちだな」
授業の終了ベルがなる。そして教師は、
「次は国際ダンジョン探索者協会の活動に関する授業をするから、全員予習しておくように」
教室から教師が出て、休憩時間となり一気に騒がしくなる教室。
優もクラスメイト達と無駄話を始める。そんなとき、
「そういえば、車田先生って万馬券当たったのかな?」
「賭け事する人だったんだな」
「知らないのか? 車田先生は飲む打つ買うの三拍子だぞ」
「副担任の新家先生にもナンパしていたしな」
「オレ達男性陣は人間味あふれる先生の方が面白いと思うが……」
「女性陣は新家先生押しらしいぞ? カッコ良い大人の女性が素敵に見えるらしい」
「確かに新家先生は麗人って感じで美人だしな。それに新家先輩も凄く美人だし」
「噂では新家先生は次女で長女はとてつもなく美人って噂だぞ」
「それはモデルレベルか?」
「モデル以上という噂だ!」
「現道! 今度、新家先輩から長女の情報を聞き出してくれ!」
「新家先生に聞けば良いんじゃないの?」
「……新家先生には怖くて聞けない。それに新家先生に睨まれ怒られたら、別の感情が生まれそうだし」
「……僕が新家先生に怒られそうだよ」
「だったら新家先輩から聞いてくれ! 出来れば写真付きで! そして新家先輩の怒り方も教えてくれ!」
「美人の新家先輩に睨まれたらきっと気持ち良いかも……」
熱弁を振るう友人に少し距離を置き始める優。
「冗談だよ! 冗談!」
「さすがにそこまでの分別はついているって!」
「……僕は君達と友人付き合い止めようかと思ったよ」
後日、彼等は新家家長女を見る事になる。そして彼等は何を思ったのかは……、後日新家先生から教育的指導を受ける事になる。
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