第11話 特殊探索科⑤

「他に質問は有るかね? なければ説明会を終了しようと思うが」

「よし、遊びに行くか。お前らも行くか?」

「だったら、優君の入学パーティーも兼ねてみんなで遊ぼう!」

「リナ君。明日から実力テストだ。テスト後に入学パーティーをしたらどうだ? それから日野君、テスト勉強はしているのか? また赤点取って追試なんて事になったら先輩としての面識が経たないのではないのか?」


 市太郎の言葉に不愉快そうな顔をする日野と、テストの事を忘れていたとアハハと笑うリナ。


「それでは今日の説明会を終了する。テスト勉強を頑張ってくれ」


 最初に日野が立ち上がり「じゃあなー」と言って部屋を出て、リナがお菓子を片付けて「またね」と言って退出した。

 優は入学初日に上京して寮にはまだ入っていない。荷物も業者が配置してくれているので、寮の場所を思い出しながら帰ろうとすると市太郎が、


「優君は私と一緒で寮暮らしだろう。一緒に帰ろう」


 市太郎の案内で優は学校から徒歩五分の寮に帰る。その帰路中に優は市太郎に学校の事を聞く。


「あの山田君。特殊探索科は厳しいのかな? 僕が特殊探索科って知ると他の皆が同情的だったんだけど」

「私の事は市太郎と呼んでくれて構わない。厳しいというのは訓練の事だね。たしかに訓練は厳しいかもしれないな。しかしダンジョンで生き延びる為には必要な事だと思う。実技担当の教師も探索者上がりの者達も多い」

「……やっていけるかな? 体力はあまり自信ないんだけど」

「大丈夫。今年は去年の訓練課程を元に作成しているそうだ。特殊探索科は去年出来た新しい学科だからマニュアルというモノが無いので去年は実験的だったのだよ」

「……そうなんだ」

「だから今年は専門の大学教授と相談して去年の訓練課程よりも、実戦的・効果的な訓練方が出来上がったそうだ」


 涼やかな表情で答える市太郎だが、優の表情は引きつっている。去年よりも厳しさが上か下か分からない。……きっと上だなと思った。


 寮に着いた。築浅マンションタイプで防犯面も充実している様だ。

 オートロックを開けて自分の部屋である四階に行く。どういう訳は市太郎も一緒だった。


「優君の部屋は私の隣だ。何か不備があったら教えてくれ。業者に連絡するから」


 市太郎は優の返事を聞く前に自分の部屋に帰った。

 市太郎が隣に住んでいる事に驚いた優は廊下で少しの間、立ったままだが、自室に入る事にした。玄関で「ただいま」と言って部屋を見るとリビングが広かった。部屋も三つあり3LDKタイプの設備も充実していた。

 一人しか住まないのにどうしてこんな広い部屋なのだろうか? 何かの間違いか? そう考えていると、呼び出し音が聞こえた。

 玄関のドアを開けると市太郎が居た。市太郎が話す前に優は話しかける。


「市太郎君、この部屋広すぎ! 一人しか住まないのに部屋が三つある!」

「ふむ。このマンションはファミリータイプだからね。部屋が多いのだよ。しかし心配はいらないよ。広い部屋を堪能してみてはどうだい?」

「いや、でも……」

「夕食の件を伝え忘れていた。夕食は七時だから。迎えに行くから、それまでは勉強でもしていて時間を潰していてくれ」


 夕食は各自で食べるのだと思っていた優だが、


「お姉ちゃん! 服を脱ぎっぱなしにしないでって言っているでしょう! ちゃんとハンガーにかけておかないと皴になるからって! お酒飲まない! まだ夕食前なのに!」

「大丈夫だって。ビールはお酒の内に入らないから」

「エミ! テレビくらい見ても良いだろう! 良い所なのに!」

「駄目よ! 明日テストでしょう! 勉強しないと駄目じゃない!」


 聞いた事ある声が聞こえる。リナと日野の声。他の二人の声は聞いた事ない優だった。


「この寮は特殊探索科専用の寮だから。リナ君も日野君も家族と一緒にこの寮に住んでいる。入道先生の家族も」


 いろいろと驚く日だったと思う優。驚く日の中でも過去ベストワンだと思った。

 しかし驚く日はまだ続くだろう。現在四時だから明日まで残り八時間。それまで何回驚くだろうかと呟く優だった。

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