【完結】腐敗公の嫁先生
丸焼きどらごん
馴れ初め
プロローグ 腐朽の大地
世界はざっくり三つの領域に分けられる。
人間種が暮らす人間領。魔族種が暮らす魔族領。
そして
前者二つの種族間でも更に細かな種族、民族によって細分化され様々な国が存在する。しかしこの世界に住む知恵持つ者の共通認識として、世界は大きく分けて三つなのだ。
誰も住んでいない腐朽の大地と言う場所は、それほどに広い。
腐朽の大地。その場所では何もかもが腐り果て、朽ちていく。
しかし世界に初めからそのような土地があったわけでは無い。
かつてその場所は他の土地と同じように、人間種と魔族種の領域で分かたれていた。それがある時を境に突如として"主"が現れ、世界を侵食していったのだ。
川や湖は毒を有する粘性の液体と化し、生物も植物も鉱物も何もかもがことごとく腐り果て汚泥となった。大地は溶けたそれらの成れの果てで満ちている。
そして汚泥が発する呼吸もままならないほどの腐臭の中、毒の霧までもが各所で発生していた。
毒霧をひとたび吸い込めば、どんな生き物でも酸で焼かれたように肺が爛れてしまう。
そんな誰も住めない大地を住処とする、その空間を作り上げたそもそもの元凶たるモノ。それは人間からも魔族からも嫌われ、様々な忌み名で呼ばれていた。
しかしある時、魔族の王の一人が皮肉を込めつつ言ったのだ。「忌々しいが、広大な土地にただ一個体君臨する姿は正に支配者。ならば私から、大公の爵位を贈ってやろうではないか。奴は一応、我々と同じ魔性の存在だからな。せいぜい人間どもに魔族種こそが世界の覇権を握るにふさわしい存在だと、思い知らせてやるとしよう」と。
腐朽の大地に住むモノは、魔族の王ですら出来れば関わりたくない存在だ。しかし彼らにとって幸いなことに、腐朽の大地がより多く広がるのは人間側の土地。ならばと、せめて腐朽の大地は魔族側の土地であると主張するべく、相手に了承もとらず称号だけが贈られたのだ。なかなかの図々しさである。
仮初めの階級と共に腐朽の大地に住むモノに贈られた名前は次第に広まり、いつしか人間の間でも魔族の間でも定着した。
その存在は、こう呼ばれている。
腐敗公。
それが腐朽の大地にたった一体存在する、魔物を表す名である。
そして現在。
その腐敗公の領域たる腐朽の大地を眼下に臨む、人間領の崖の上で……一人の女が喚いていた。
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