183 唐突な限界突破
あれからさらに三日ほど森をうろついたけれど、スノーオークの集落を見つけることはできなかった。
もしかしたら、本当に全滅した?
それはそれでちょっと罪悪感があるようなと思いつつ旅館に戻っていると、行く手に幾筋も伸びる黒煙を見つけてしまった。
襲われてる。
速度を上げて向かうとスノージャイアントの群れが温泉旅館のすぐそばにまで迫っていた。
クレハが杖を掲げて指揮をしている。
どうやら彼女は補助系で後方支援が得意なようだ。
とはいえ小さなラコーンと巨大なスノージャイアント。圧倒的なサイズ差を覆すほどではなかったようだ。
クレハの後ろにあるのは旅館に通じる洞窟だ。
あの奥には【ディフェンダー】の核もある。
ここを潰されたらクレハたちの完全敗北だ。
そんなことはさせない。
「クレハ!」
「アキオーン様!」
クレハたちに迫っていたスノージャイアントを一掃して、彼女の前に戻る。
「ごめん。無事?」
「なんとか、ですが」
「これって、俺が刺激したのが原因だよね?」
「……いいえ、いずれはこうなっていたでしょう」
クレハの言い分も当たりだろうけど、それを速めたのは俺が攻略に乗り出したからだ。
攻略の準備のためとはいえ、ここから目を離したのは失敗だった。
クレハは認めないだろうけど、責任感がチクチクと俺を刺す。
撃退するべくクレセントウルフとブラッドサーバントを召喚。
【血装】【ダハーカの骸装】で武装させ、【支配力強化+4】と【支配者の加護授与】で能力を強化。
「全力で叩き潰せ」
ブラッドサーバントは持っている血泥を使いまくってスノージャイアントと同じサイズにして全身鎧と槍や斧で装備させて、対抗させる。
さらにケイオスアイズも呼んで、周辺の状況を確認。
【戦場俯瞰】のスキルと合わさって、周辺を確認する。
あちこちに孤立しているラコーンがいたのでクレセントウルフにはそれらの救援を任せる。
ゴゴゴ……。
「うえ?」
俺の援軍で状況は一気にこちら側の有利に傾いていたのだけど、いきなり地面が揺れた。
地震だ。
「あ……」
いま、なにか嫌な予感がした。
なにかと思ったけど、【危険察知+3】が動いたんだ。
なんで?
戦況はこっちに有利になった。
たぶんこのまま勝てる。
それなのに、なぜ?
地震が起きたから?
地震……って。
「火の精霊」
「え?」
「まずい。退避しないと」
「え?」
「あの【ディフェンダー】の核って持ち運びできる?」
「え? ええ……大変重いですけど」
「できるなら問題なし!」
「え? きゃあっ!」
説明してる時間も惜しい気がする。
【危険察知】がずっと騒いでいるからなのか、胸の奥がずっとざわざわして、お腹が気持ち悪い。
とにかく急いでここから逃げないとまずいと、背中を叩かれている。
でも……。
旅館を突き抜けて核のところに到着したころには、周りがずっと揺れている状態だった。
「もしかして、危ないのですか?」
「たぶんね」
すでにブラッドサーバントにはスノージャイアントを近づけないように、クレセントウルフにはラコーンを見つけたら回収して遠くに離れるように指示してある。
「それならアキオーン様も……」
「でも、クレハたちにとってこれは大事だろう?」
クレハやラコーンたちはこの水晶柱から出現した。
クレハは復活したとも言っていた。
なら、これがなくなるとクレハたちはもう復活できなくなる。
それどころか、もしかしたらなくなると同時に死んでしまう可能性だってある。
「まだ間に合うなら、できることをしないと」
「アキオーン様……」
「ごめんだけど、先払いな感じでもらうことになるからね」
「……はい、わかりました」
クレハがどこまで理解しているのかわからないけれど、言質は取った。
【ゲーム】を起動して交易コーナーに走り、【ディフェンダー】の核を指定する。
ああもう、この作業がもどかしい。
作業終了。
目の前にあった大きな水晶の柱が消える。
「え?」
と、クレハが驚くとほぼ同時。
頭の中が音で一杯になった。
爆発音だと理解するよりも早く、クレハを抱えて脱出。
背中がなんか熱い!
【対物結界】【対魔結界】を使っているけれど、効果があるのかはわからない。
いや、移動中のクレハを守ってはくれているはずだ。
能力全開、バフ全開の今の俺は音の速さを超えて……いるはず!
洞窟を抜けると同時にジャンプ。
背後を見ると、山が崩れて大量のマグマが噴きあがる光景があった。
地下に押し込められていた火の精霊が、マグマの大放出という形で地上に顕現した。
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