182 魔物は絶滅するのか?


「おはようございます」


 翌朝のクレハはげっそりした顔をしていた。


「……食べた?」

「食べました。……すごいですね」

「そっかぁ」


 すごかったかぁ。


「まだ食べ……」

「もう要りません」


 食い気味に拒否られた。


 朝食はクレハたちが用意してくれた。

 ごはんに味噌汁。卵焼きに焼き魚に煮物に納豆に海苔。

 旅館の朝食って感じ。

 なんだか修学旅行を思い出す。


「これも魔石で?」

「はい」

「大丈夫?」

「大丈夫です。さほど高いものではありませんから」

「そうなんだ」

「ええ。マスターもお好きでした」


 ダーナル氏、温泉旅館の思い出がすごく良いものだったんだろうなぁ。

 この後は、給仕をしてもらいながら俺たちがダンジョンに行っていた間のことを聞く。


 俺たちが攻略に勤しんでいたおかげか、冬のダンジョンから襲われることはなかったけれど、他の魔物集団からは襲われていたという。


「この辺りは火の精霊の影響で果物の生る木が多いですから、それを狙って襲われるのです」

「なるほどね」

「マスターがいたころは問題ありませんでしたが、私たちだけですと徐々に追いつめられまして」

「あ、そうなんだ」

「はい。以前はもっと広い領域を維持して、人の街もあったのですよ」


 祖王が言っていたことと合致しそう。

 つまりダーナル氏が倒れたことがこの辺りが森に沈んだ原因ということになる。

 とはいえダーナル氏だって不老不死なわけではなかっただろうし、一人のチートで支えられていたのなら冬の精霊の件がなくともなくなっていたってことになりそう。


「…………なんだかいろいろと考えさせられるね」

「え?」

「いやいや。そういえば……」


 と、以前にスノーオークの集落を襲った時に感じた武器などの疑問を尋ねてみる。

 最初は冬のダンジョンで集めて来たのかと思ったけど、あそこがあんな様子では武器や防具を集めるなんてできそうにない。


「そうですね。いくらかは我々から奪ったものがまだ残っていたという可能性もあります。この森のあちこちに、まだ以前の街の名残が残っているかもしれません」

「もう一つダンジョンがあったり?」

「その可能性も否定はできません」


 手に入れる方法はいくらかあるわけか。


「そっか。まぁ、あんまり深く考えても仕方ないかな」


 それよりも、今日もフェフたちは戻ってきそうにないから、俺は俺で頑張るとしよう。


「ちょっと、散歩してきます」

「え?」


 今日も一日かけて黄金サクランボを食べるでもいいけど、それはダンジョンを攻略しながらでもできるので、スノーオークを探す旅に出ることにする。


 将軍の大弓を持ち、【樹霊クグノチ】を使って魔境をひょいひょい移動していく。

 ついでにダーナル氏がこの辺りを治めていた頃に一番大きな街があった辺りも聞いて、偵察に向かった。


 あった。

 苔やら蔓やらに飲み込まれている廃墟を想像していたのだけど、違った。


 城壁なんかはあちこち崩れているけど、無事だ。

 それどころか、魔物が暮らしている。

 ううん?


 ゴブリンやらオークやらオーガやら二本足の魔物は色々いるけれど、一番多いのは普通に人間っぽい。

 でもきっと人間じゃない。

 ではなにかと【鑑定】さんに仕事してもらうと。


『ウェアウルフ:ウェェェェェイじゃないよ、ウェアだよ』


 名前はわかったから仕事はした。

 もうそれでいいよ。


 というわけでウェアウルフ。狼男、狼人間のようだ。

 ダンジョンで見たウェアウルフは変身後だったけど、天然物のウェアウルフはちゃんと人間形態にもなるんだな。


 で、なんでそれで人間だと思わなかったかは一目瞭然。

 腹が掻っ捌かれた熊に、みんなで仲良く頭を突っ込んでもぐもぐしていたから。


 たとえ人間だったとしてもあそこまで野生満々だったらもう同類扱いする必要もないよね。

 さらに襲ってきたら言わずもーだけど。


 これだけ色んな種類がいるなら、以前にザルム武装国を襲った魔物国家みたいに強い個体が支配してるんだろうな。


 ちょいちょい、重武装の魔物が歩いていたりする。

 もしかしたら、ここは支配している他の集落に装備を供給してたりして。


 ここは旅館を襲っているのかな?

 可能性はあるけど、それなら様子見みたいな襲い方をしている理由もなさそう。

 なら、知らないかも。


 とりあえず、いまここにちょっかいをかけるのは藪蛇になりそう。

 冬のダンジョンの一件が終わってからでもいいか。


 というわけで他の場所に向かう。


 その後、三日ほどうろうろした結果、スノーオークの集落を二つ見つけた。

 クレセントウルフとブラッドサーバントを大量召喚しての包囲殲滅。戦闘そのものは一時間もかからずに終了。

【血装】で武装させて、敵を倒せば倒すほどに増えていくブラッドサーバントの攻勢はゾンビ映画みたいなものなのだから、組織的に使えば勝利はたやすい。


 ていうか、この調子でスノーオークを狙い撃ちしたら、全滅とかありえるのかな?

 いや……さすがにそれは、無理だよね?


 おかげで【貯蔵+7】に成長した。

 それと移動中にぽりぽりと黄金サクランボを食べたので、能力値も上昇。

 運が増えないのは……もう諦めた。



能力値:力1170/体2188/速1036/魔947/運5



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