61 エルフ娘たちは語る
菜食的な生活を送っていたエルフ娘たちを肉食にしてしまった。
とはいえ朝からガッツリ肉というのはなんだかなぁと悩んだ結果、BLTサンドにする。
「昨夜はごめんね」
食事をしながら昨夜のことを謝る。
まさかファウマーリ様やこの国の祖王がやって来るとは思わなかった。
身になる話はできたとは思うけれど、自分の素性を隠しておきたい三人からしたらたまったものではなかっただろう。
「ふぃえ、らいじょうぶふぇふ」
BLTサンドで口の中をいっぱいにしたままフェフが言う。
そんな様子はまさしく子供。
これで成人とか言われてもと内心で首を傾げてしまう。
「あの様子だと、お二方は私たちのことを目零していただけるようですので、むしろそのことがわかってほっとしています」
「うん。そうみたいなんだけどさ」
国としてはフェフたちのことに関わるつもりはないと言ってくれた。
だけど、他で彼女たちを狙う存在がいる。
そのことは言っておかないといけない。
「そうなのですか」
BLTサンドを食べ終わり、ウルズとスリサズが淹れてくれたお茶を飲みながら『獄鎖』という組織のことを語るとフェフは沈んだ顔をした。
「でも大丈夫。ファウマーリ様は俺がその組織と戦うことでなにかの罪に問うようなことはしないって保証してくれたから」
昨夜は話が色々と横道にそれたけれど、最後にはそう言ってくれた。
むしろ、衛兵を使うと損失がすごいことになりそうなのでやってくれと言わんばかりだった。
依頼じゃないので報酬はないけれど、違法な物以外は好きにしていいとも言われている。
とはいえ……。
「君らを攫った組織の上位とはいえまだ何かをされたわけではないからね。藪をつついて蛇を出すになっても困るし」
「藪? 蛇?」
「余計なことをして騒動を広げたり起こしたりっていう意味の諺」
「「「ああ」」」
納得してくれたようだ。
「とはいえ、そんな状態だからね。どうしたものかって思って。あ、迷惑とかそういう話がしたいんじゃないんだよ」
「あの……」
「うん」
「アキオーンさんが私たちをたすけてくれるのはもう信じてます」
「そうなの? ありがとう」
「だから、私たちも秘密を持ったままなのは却ってアキオーンさんを混乱させると思うので、全て話したいのですけど」
「うん、いいよ」
そうか。
まだ秘密があったのか。
ファウマーリ様がなにか含んだ言い方をしていたのはこのことだったのか。
「どうぞ」
「実は私はルフヘムという国の王族なのです」
「王族……」
「はい」
「それがなんで?」
「政争です。異母兄が王位を狙って同じ母の兄弟を殺したのです」
何も言えなかった。
家の継承を争うのはなにも王族だけではない。どこそこの商店でそういうことが起きたとか、刃傷沙汰になったとかそういう話は聞いたことがある。
だけれど、目の前にそういう人がいたことはない。
だから、こんな時になんて声をかければいいのかがわからない。
わからないけど、なにかを言わなくては。
「……わかった。そいつらを倒しに行けばいいんだね」
自分でもなに言ってんだと思ったけど、それを聞いた三人はぽかんとして、それから慌てた。
「いやいやいや! そういうことじゃないです!」
「あ、そう……そうだよね! あはははは!」
なに言ってんだろうね。
調子に乗り過ぎだよ。
うん。
「ほんとにもう……アキオーンさんは。ありがとうございます」
そう言ったフェフは泣き笑いみたいな顔をしていたし、両隣のウルズとスリサズもなんだか泣きそうな顔をしている。
「私たちを見つけてくれた人が、アキオーンさんで良かったです」
そう言われて、俺は本当にうれしかったし、絶対に彼女たちを守ろうと改めて心に決めた。
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