ゆーくんが あらわれた!
こんばんは。孤独のバスタイムの主人公、即ち余です。
お風呂に入るときはね誰にも邪魔をされず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……。
だから来るな、ちみっこどもめー。
例え育児放棄と罵られようと、余はバスタイムだけは譲る気はありません。だから、ほら、耳を澄ませば――
『良いですか、良い子の皆様がた? 魔王様は今、大事なお仕事中です。呑気に風呂入ってるような気もしますが、それでもお仕事中なのです。そんな魔王様の邪魔をしても良いのですか? ……はい、そのとおりです、盗賊様。いけません。なので、皆様のお相手は不肖、イビルアイが務めさせていただきます。え? トランプですか、構いませんよ、戦士様。それでは、何を……はい、神経衰弱でございますね、賢者様。他の御三方もそれで――ッ! どこへ行く気ですか、勇者様ッ! 大人しくここでトランプを……っあ! せ、戦士様に賢者様、何をッッ! おのれ、通しはせぬ、通しはせぬぞぉぉぉぉぉおっ!』
余の無茶ぶりに答えて孤軍奮闘するイビルアイの叫びが聞こえてくる。
因みにとうくんだけが大人しくしているのは、彼は一度だけ一緒に入ったからだったりする。
持ち前の盗賊スキルを駆使し、気が付いたら背後にゼンラ―で立っていたので仕方なしに入れてあげた――のだが……とうくんは余の長風呂に耐え切れず、それ以来二度と一緒に入ろうとしない。寧ろ余がお風呂に向かうとちゃぶ台の下とかに隠れる。犬か。風呂嫌いの犬か! ……あぁ、猫だった。
「っあ~~」
背伸びをしながら、足も伸ばす。
少し熱めのお湯はヒリヒリとして気持ちが良い。体中の疲労が溶けていくようなこの瞬間が、余は堪らなく大好きです。
『ふ、ふふふ、どうしましたか、勇者様っ! 戦士様と賢者様がもう飽きてしまわれた今、残るはあなただけです! さぁ、大人しくトランプをするか、一人だけ早めにおやすみなさいをするか……選びなさい!』
『いいえ』
『……諦めない、と。そうおっしゃるのですか?』
『はい』
『良い、覚悟です……勇者様っ! ですがっ! その覚悟は無謀です――ッ!』
……いやー、何か盛り上がってる所、大変申し訳ないのですがぁー。
「イビルアイ! イービール―アーイ! もう良いですよ、ゆーくん来させちゃってぇー」
『うぇ? もしや今、心無い上司から自分の三十分にもわたる死闘を全否定する言葉が聞こえましたかっ? 認めません! 認めわせんぞぉ――ぎゃぁ、目が! わたしの球体
「イビルアイっ!」
『申し訳ありません、魔王様! 勇者様に突破されましたっ!』
「バ〇ス!」
『止めを刺されただとッ!』
うっさいです。良いって言ってるんだから来させてあげれば良いのです。
イビルアイの断末魔に被せるように、だだだだ、と猛スピードで走ってきた物体Uは、脱衣場でシュパッと、一瞬で服を脱ぎ捨てると飛び込んできた。……余の胸に。
「ひぎぃ! 予想していたとは言え、やっぱり余の身体が目的だったのですね、ゆーくん! ちょ、痛い! 痛いからぁ! 触ってもいいからっ、せめて優しく、優しくして下さいっ!」
できれば明かりも消して!
「―――――――」
だが、そんな乙女の懇願も、おっぱい星人のゆーくんには効果なし。……いや、少し乱暴にされなくなったけど、それでも両手はしっかりと余の二つの果実にあてがわれている。
「ゆーくんは本当におっぱいが好きだの……」
「はい!」
力強く肯定された。ハチミツ色の髪の奥から、普段は前髪に隠れている青い色の瞳が見えた。めっちゃ輝いていた。
……おっぱいを揉んで瞳を輝かせて良いのか、勇気ある者よ。
「ほら、しっかり身体を洗ってから入ってくるのだよ……」
「……いいえ」
いやいや、と首を振るゆーくん。
「……もしかして、一人じゃ体を洗えなかったりするのですか?」
「はいっ!」
しゅびっ、と右手を上げて元気よく。……だから、それで良いのか、勇気ある者よ。
「仕方がないの。では余が洗ってあげましょう」
「はい!」
元気な返事を一つして、ばんざーい、とお子様一丁洗い場に。
さて。一緒にお風呂に入った結果、今更ながら分かったこと。
……ゆーくんは、ゆーくんで無くてゆーちゃんだった。
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