第22話
私とあの男との出会いから運命の日までを辿り終えようやく還ってきた、始まりの場所へ。
鉄女であるはずの私を怒り狂わせたのは、あの男の放ったひと言「あんな子が産まれるなんて聞いていない」というセリフ。
その言葉が意味するのは、アリシアの存在否定。
そのひと言がきっかけとなり、私は怒りの業火を身に宿した。
そしてこの物語の始まりへと還るのだ。
ここまで語ってしまえば、別段あとは語ることなど何もありはしない。
私が最初に提示した夢についても、私が何をするでもなく無事に叶った。
あの男は両親に言われるがまま、自身の荷物をまとめ邸を後にした。
のちにマカロフ家から派遣された使用人によって、離縁の手続きは滞りなく処理され私の夢は無事に叶った。
それにより、私とあの男はもう何の関係もない間柄になったのだ。
だが、それだけでは足りなかった。
私はあの男と同じ景色を見たくなかった。
私はあの男と同じ風を感じたくなかった。
私はあの男と同じ空を仰ぎたくなかった。
私はあの男と同じ大地を踏みしめたくなかった。
全ての事柄において、あの男と私は対極の位置関係にいたかったのだ。
世界を、時間軸を、あの男と隔てたかった。
だが、現実的に考えるとさすがにそこまでは出来なかった。
距離をとるにも限界があるのだ。
だから、
だから、私はーーーー
完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます