第7話 なんか変な格好させられて不審者扱いされたよ。

――翌日――


チュンチュン……

小鳥の囀りが聞こえる。

窓から温かな光が差し込む……



「んぁ……朝か……」

眠い眼を擦りながら、ショウタは起き上がった。

今日は、いつもと違う気持ちの良い朝だ。


何故か?

それは、そう!!!

ベッドで寝たからだ!!

至極単純な事だ。ふかふかのベッドで寝るという事は、人間にとって何よりも幸福な事なのかもしれない。


部屋に置いてある時計を見た。

午前7時を指している。

アイツ……いや、クルスは9時に来るって言ってたな。

早いとこ支度するか。


部屋に備えつけられているシャワーを浴びて、昨日買った新品の服に腕を通す。

この服は、昨日クルスにもらったお金で買った物だ。

余ったお金でパンを買い、さらに余ったお金は寄せてある。金貨1枚でもいろんな事が出来る。

改めてお金の大切さを感じた。

昨日はムカついたけど、なんだかんだいってクルスには感謝だな。


おっといけない。クルスじゃなくて「クルスさん」とでも呼ぼう。あんなチンチクリンでも一応上司だからな。


今日から仕事が始まる。

一体俺はどんな仕事をするんだろうか?

債務の回収に行くのか。はたまた融資をするのか?

まぁどちらにせよ頑張ろう!


さて……そうこうしている内にもう9時だ。


そろそろかな?


ニコニコ。笑顔でクルスさんに挨拶しなくちゃ。





――――2時間経過―――――

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……

事務所が揺れている!

地震?いや、ショウタの貧乏揺すりが止まらないのだ。


うぉぉぉーーーーーい!!!

アイツ!!ぜんッぜん来ないじゃん!!

ショウタは笑顔では無く般若の様な顔になっている。


アイツ9時に来るって言ってたよね?

聞き間違い?

放置?

いや、今日は休み?


すると…………



バンッ!!!

「おっはよーうさーん!!」


クルスだ。何事も無かったかのような満面の笑みで事務所に入ってきた。


「クルスさん…………あの……始業って9時からですよね?」

ショウタはクルスに尋ねた。


「は?そうじゃよ。今9時じゃろ?」

クルスは時計を指差して言った。


「えっ…………今11時…………」

ショウタは時計を見た。11時…………


「なんじゃ?ワシが9時と言ったら今は9時じゃ!良く覚えておけ!カスが!!」

クルスは某アニメのジャイ○ンみたいな無茶苦茶な俺様理論を言い出した。理解出来ない。


まぁいい……


「あの……クルスさん。俺はどんな仕事をやればいいんですか?」

ショウタは単純に気になる事を聞いた。


「あー……今日はな。これから行く所があるから、お前も付いてくるんじゃ!!行くぞ!!」


バタンッ!!


「あっ…………ちょっと!待って下さいよ!」


クルスとショウタの二人は、ある場所へ向かった。

それは……



――聖フランシス大教会――


門の前に怪しい二人組が教会の中をジーッと見ている。


そう……クルスとショウタだ。

二人はパーティグッズでよく見るヒゲがついたメガネをかけている。

見るからに怪しい。行き交う人達もクルス達を見て眉を顰める。


「あ……あの……クルスさん?これ……どういう状況なんですか?」

恥ずかしさに耐えかねたショウタがクルスに尋ねる。


「バカモン!!静かにせんか!!この完璧な変装がバレてしまうじゃろうが!今は耐えるんじゃ!」

クルスはヒソヒソ声で話した。


「あの…………クルスさん……う……後ろ……」

ショウタがクルスの後ろを指差す。


「なんじゃ!後ろがどうした?………………あ」

クルスが振り返るとそこには、ニッコリと笑みを浮かべたシスターがいた。見た目は50~60ぐらいだろう。

熟女シスターとでも言うべきだろうか。


「あなた達?教会に何か御用かしら?先程から教会の中を見ているみたいだけど。怪しい子供二人組が教会を覗いているって通報があったんだけど‥‥‥あなた達は……ご兄妹かしら?」

熟女シスターは優しく語りかけてきた。


「いや……まぁ……その…………ハハ……ハハ(ちょっと!クルスさん!!説明して下さいよ!!)」

ショウタはシスターの質問を誤魔化しつつ、クルスに助けを求める。


「………………そうじゃ。このクソ兄が教会を見たいっていうから仕方なく付いてきてやったんじゃ。全く……世話のかかる兄じゃよ!ふぅ……」

クルスは溜息をつき、やれやれと言ったポーズをしている。


はあぁぁぁ~?!

何言ってんだ。この人。俺は良く分からないまま連れて来られて変な変装までさせられてるんだぞ。

訳が分からん。


ショウタがそんなことを考えていると…………


「あら……まぁそうだったの。お嬢ちゃんは優しいのね。いいわよ。教会を見たいのよね?さっ……中に入りましょう」

熟女シスターはクルスとショウタを中に招き入れた。


おいおい……なんか話しが勝手に進んでるぞ。


ふと……クルスの方を見ると目が合った。ニヤーッと不敵な笑みを浮かべている。

何考えてんだよこの人は…………


何はともあれ、クルスとショウタは教会の中に入って行った。


ショウタは何故、教会に来たのかよくわからないまま、場当たり的な状況に流されていった。

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