33. 庭園グレードアップ計画!

放課後、ミオ、ヒナタ、ツバキ、そして妖精たちは青い薔薇の花畑の中心にあるガゼボにいた。

「シュシュ、さっそくやってみて」

ツバキにそう言われて、隣にいたシュシュは頷き、杖を空に向けてくるりと回す。

「結界、展開!」

しゅわわん、とガゼボを中心に青く半透明に輝く薄い膜のようなものが、青い薔薇の花畑をドーム状に包んだ。

「おぉ~!」

ミオとヒナタ、そして妖精たちが張られた膜を見ていた。

「さてさて……強度はどうかな〜?ミオちゃん、ヒナタちゃん、さっそくやってみて。あ、思いっきりね」

ツバキがミオとヒナタの肩をぽんっと軽く叩いた。

「わかりましたっツバキ先輩!行こう、フェル!」

「おっけ〜!」

真っ先にガゼボを飛びだして花畑に立つのはヒナタとフェルだ。

ヒナタの指輪をはめている方の手に、フェルは杖を持っていない方の手を乗せた。

すると、キラキラと銀色に輝く光の粒子が現れる。

フェルは杖をくるくると回す。

「くっつけ〜大きくなれ〜さぁ、ヒナタちゃんが想像する姿になーれっ!」

ちらちらと舞っていた銀の光の粒は集まって大きくなり、それは人をすっぽり包めそうなほどの大きさになる。

そして、やがて銀の光が消えると、そこには人の背丈と変わらないぐらいの大きさの、ナイフやフォーク、スプーンといったカトラリーがあった。

「それっ飛んでけー!」

ヒナタのその言葉を合図に、巨大なカトラリーたちは半透明の膜に向かって飛んでいく。

カンッ!

ぶつかると甲高い音が響き渡る。だが、膜にヒビが入った様子はない。

役目を終えたカトラリーたちは、再び銀の光の粒に戻って消えた。

次はミオとロロンの番だ。

「ロロン、準備は大丈夫?」

「だいじょーぶ!」

ミオとロロンがガゼボを出て花畑に立った。

ミオはぎゅっと指輪がはまっている方の手を固く握る。そして、目を閉じた。

頭の中にあるものを思い浮かべる。

ミオの指輪がキラキラと輝きだすと、ロロンはくるんと杖を回した。

ミオとロロンの頭上に眩しいぐらいに輝く黄色に光る玉が現れる。

「姿を現せ!!」

ロロンが杖をビシッと光る玉を指す。

ビシビシッと玉にヒビが入り、割れると黄色の鱗に覆われたドラゴンが現れた。

「ドラゴン、あの壁に向かって攻撃!」

ミオがそう指示すると、ドラゴンはガバッと大きな口を開き、雷を纏わせたビームを放った。

ドラゴンによるビーム攻撃を受けても、青い薔薇の花畑を覆った膜は傷一つ付かなかった。


「おーい、ミナト、ハルキ〜!やってみてー!」

今度はツバキは膜の外側にいるミナトとハルキに向かって手を振り合図を出した。

「パル、行くっすよー!」

「はいはぁ〜い」

ハルキの指輪がキラリと輝く。パルがくる〜んと杖を回すと、紫色に煌めく光の粒子が現れる。

「手裏剣・鬼雨!」

ハルキが壁を指さすと、周囲の光の粒子が手裏剣へと変わり、雨が降るように手裏剣が飛んできた。

それでも半透明の膜には傷一つ付かない。

「ねぇ、ミオちゃん。さっきハルキ君が言ってた、きうってなに?」

ロロンが首を傾げてそう聞いてきた。

「鬼の雨って書いて鬼雨。鬼の仕業じゃないかって思うぐらい激しい雨のことをそう言うんだって」

ミオがそう説明すると、ロロンは納得のいった表情になる。

「あ〜そういうことね。激しく降る雨のような手裏剣の攻撃だから、ハルキ君、『手裏剣・鬼雨』って言ったんだ!」


「ハッハッハ!俺の攻撃をくらえ!フィーナ、行くぞ!」

次はノリノリなミナトが前に出る。

「はいはい、わかりました」

フィーナが杖をくるっと回すと、大きな青く輝く魔法陣が出現する。

「メカジキアタックだー!!」

ミナトがビシッと決めポーズ。魔法陣から大きなメカジキが出てきて、半透明の膜に一直線に向かう。

カジキの特徴的な槍のように長い上顎がぶつかった。

それでも、膜は依然として傷一つなく綺麗だった。


「うんうん。内側からの攻撃にも、外側からの攻撃でも傷一つ付かなかった……。強度バッチリだね!」

この強度なら、悪魔からの攻撃を十分に防げるだろう。一時的な避難所として使える。

ツバキはふっと笑う。隣にいたシュシュも「やったな、ツバキ!」と嬉しそうな顔を見せた。

順調にツバキたちは庭園の設備をグレードアップしていった。


「ツバキ先輩、もう一つの機能も早く確かめましょうよ〜!」

ヒナタは待ち切れない様子でツバキを急かす。

妖精の魔法で結界の中に移動してきたミナトとハルキも「早く試そう!」とワクワクした表情だ。

「わかったわかった。それじゃあ、いくよ……!」

ツバキはスッと指輪をはめている方の手を上げた。

「モードチェンジ!」

ツバキの指輪がピカッと光ると、パッと真っ暗になった。

今までほんのり青く輝く半透明の膜は一瞬にして、光を通さない黒色へと変わった。

真っ暗になった直後は目が慣れておらず、何も見えなかったが、だんだんと慣れてくると……。

「わぁ……!綺麗!」

ミオは天井を見て、目を輝かせた。

煌めく星空が浮かんでいた。

悪魔から身を守ってくれるシェルターは、モードチェンジをすると、プラネタリウムになるのだ。

「すご〜い!」

妖精たちも嬉しそうに飛び回っている。

「なんか野外学習に来た気分っすねー」

ハルキは星空を見ながらそう呟く。

「わかります〜!あ、今度、ここでみんなで星空を見ながらお昼ごはん食べませんかっ!?」

ヒナタが手をポンッと叩きそう提案する。

「楽しそうだけど……こんだけ真っ黒だとよく見えなくて、ごはん食べにくくないか?」

ミナトがそう言うと、ヒナタは「うっ……ダメか……」と残念そうに呟く。

「それじゃあ、幾つかランタンとか用意すればいいんじゃない?」

ツバキがアイディアを出すと、パッとヒナタが顔を上げた。

「それですよ!流石です〜ツバキ先輩!」

「私、すごいでしょ〜」

「なんだかキャンプ感あっていいですね」

ミオはこの星空の下、ランタンに囲まれてみんなでごはんを食べる姿を想像して笑顔になる。

「ここでみんなとランチ!めっちゃ楽しそう〜!私たちもお菓子を用意するよ!」

ロロンたちも参加する気満々だ。

「じゃあさっそく日程決めましょう〜!みなさん、どの日だったら都合の良いですかー?」

ヒナタがさっそく日程をたてる。


「う〜ん……図書委員の仕事と、それと、文化祭の準備で結構昼休み、忙しいんすよ……」

ハルキがスマホのスケジュールアプリを確認しながらそう呟く。

「あ〜そうですね。文化祭の準備で忙しいですよね……。私たちのクラスも色々作らなくちゃいけないし……!」

ヒナタもスケジュールとにらめっこしながらそう言った。

秋は行事も多くて学生たちは楽しくも忙しい日々である。

星空の下でお昼ご飯は、しばしお預けだ。

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