13. 素敵なプレゼント

ゴールデンウィーク明け最初の学校。

だるそうに授業を受けている生徒が何人かいた。ミオもまた、趣味の手芸に熱中して夜更かしばかりしていたので、授業中も何度かあくびをしてしまった。


放課後、いつも通り秘密の庭園に向かう。

いつもと少し違うことがあるとすれば、ミオ一人で向かっていることだ。

ヒナタはロロンとフェルに呼ばれて先に庭園に行った。


人気が無い廊下、指輪をはめている手で壁をノックする。

ミオは汚れ一つない真っ白な扉を開けた。


さぁっと心地よい風がミオの黒髪を揺らす。

「こんにちは、ミオさん」

涼やかな風を思わす水色の髪に上品な白色のワンピースを着た妖精、ミナトの相棒であるフィーナがミオを出迎えてくれた。

「フィーナ、こんにちは。みんなは?」

「いつものガゼボでミオさんを待ってるわ」

先導するフィーナにミオはついて行った。


青い薔薇の花畑の中心に建つガゼボ。

今日はガゼボの周りに色とりどりな風船とリボンで華やかに飾り付けられていた。

「ミオちゃーんっ!」

ガゼボから勢いよく飛び出してきたのはミオの相棒、ロロンだ。

「すごい華やかだね」

ミオはそばにあった黄色の風船をつついた。

「みんなと協力して飾り付けしたんだぁ!気に入ってくれた?」

「うん。とっても可愛い」

ミオがそう言えばロロンは嬉しそうに笑った。


「お、本日の主役が到着しましたね〜!」

ツバキとヒナタがミオを手招きする。

テーブルにはたくさんのお菓子が並んでいた。

ミオが座るとフェル、シュシュ、パルが花冠をよいしょと運んできた。そして、ミオの頭にそっと乗せる。

パンッとクラッカーが鳴った。ちらちらと紙吹雪が舞う。

「お誕生日おめでとう〜」

ヒナタ、ツバキ、ハルキ、ミナトがパチパチと拍手をしてくれた。

ミオはぺこりと頭を下げた。

「お祝いしてくれてありがとうございます。その、過ぎちゃってるのに……」

「来年は当日にお誕生日会しようねっ!」

ヒナタはきゅっとミオの手を握った。

「ま、今回は、もっと音木や金森と仲良く出来たらいいなーって思って開催したわけなんで……。音木、そんなかしこまらなくても大丈夫だからな」

ミナトはそう言ってスススッとテーブルに並んでいた沢山のお菓子をミオの前に持っていく。

「学校近くのコンビニでなるべく沢山の種類のスイーツを買ってきたっす〜。お好きなのをどうぞー!」

ハルキが「これがいちごジュレので〜これは新商品らしいっす」と買ってきたスイーツの説明をしてくれる。

ミナトとツバキがシュークリーム争奪戦を始め、なかなか決着がつかないじゃんけんを眺めながらミオ達は選んだスイーツを食べていた。


「ロールケーキすっごく美味しかったね!」

ミオはロロンとロールケーキをはんぶんこにして食べた。

「ふふ、ロロンってば口の端にクリームついてる」

「え!?」

ミオはテッシュでロロンの口元を拭いてあげた。


「シュークリーム……」

ミナトが恨めしそうにすっかり完食したツバキを見ていた。

「まぁ、また今度買ってきて食べればいいじゃないですか」

フィーナがミナトの頭をなでなでしていた。


みんなスイーツを堪能できたところで、ロロンがミオの制服の袖をぎゅっぎゅっと引っ張る。

「ミオちゃんに見せたいものがあるのっ」

ガゼボを出て花畑を抜けた先。

そこには大きな湖がある。


「わぁ……!」

ミオは思わず感嘆の声を上げる。

湖の側に、大きな桜の木が生えていた。5月だが、目の前にある木は柔らかな桃色の桜の花が綺麗に咲いている。

そして桜の木にブランコがついていた。


「昨日までは、なかったよね……?」

「うん。ミオちゃんが来るまでにフェル達とヒナタちゃん達に協力してもらって魔法で作ったんだよ!」

ミオは恐る恐るブランコに座る。そしてゆっくりと漕いでみた。

ふわぁと心地よい風と桜の花弁がミオの頬をなでる。

ミオの頭にしがみついているロロンが「めっちゃ楽しいねっ!」と嬉しそうに言った。


「気に入ってくれた?」

ロロンがそう聞けばミオは力強く頷く。

「うん。とっても!」



「いや〜気に入ってくれたみたいで良かったぁ」

少し離れた場所からミオがブランコを漕いでいる様子を見ていたツバキが目を細めてそう言った。

「とっても楽しそうだねぇ……僕もあのブランコに乗ってお昼寝したいなぁ」

「ブランコは寝るとこじゃないっすよ、パル!」

ハルキが肩でずべっと眠そうにしているパルをつついている。

「ミオちゃんとロロン、とってもいい表情してる」

ヒナタはスマホを取り出してカメラを起動する。

いい角度を探し、何枚か撮影した。

「どう?いいの撮れた?」

ミナトも少し覗いてみる。

「はい!あとで二人にも見せなきゃ」


もうしばらくヒナタ達は楽しそうにしているミオとロロンを眺めていた。

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