かして

鷲ノ手

かして

「欲しいものは、ありませんか。」

「何か、欲しいものは、ありませんか。」

 年が五十ばかりの、とある商人が物を売りながらみちを歩いていた。

「なんでも、揃っていますよ。」

 しかし、誰一人として商人の周りには寄ってこない。

「本当に、なんでも売っているのですけれどね。」

 商人は困った顔をして言った。

「これでは今回も、成果なし、でしょうか。」

 商人がそんなことをぼやいていると、何か、声が聞こえた。

「・・・し・・て、ください。」

 その声はとても小さくて、よく聞こえなかった。

 商人はその声に気づかなかった。

「・・・すみません・・・。」

 今度は少し大きな声で、その声が聞こえた。

 商人はその声を聞いて、にっこり、笑った。

「どうなさいましたか。」

 その声は、まだ幼い、少女の声だった。

「・・・なんでも、揃っているって、言っていたから。」

 その声はとても細く、か弱かった。

 商人は、にこにこしながらその声を聞いている。

「・・・少しだけ、ソレ、貸して・・・ほしくって。」

 その声はだんだん小さくなったいった。

 声の主はみちに現れた。

 商人は、それなら、と大きな鞄を出した。

「これは売り物だから、貸すことはできません。」

「・・・ごめん、なさい。」

 そのは商人に謝った。

 確かにそうだ、売り物を貸すなんてできない。

 商人はにこにこしながら、でも、と続けた。

「でも、この鞄の中身なら、貸し出せますよ。」

 商人の言葉を聞いた、声の主は、嬉しそうに言った。

本当ほんとうに?」

 商人も嬉しそうに、

「ええ。」

 と答えて、その鞄を差し出した。

 その鞄に入っていた物を選んで、少女は消えた。

「次に逢ったときに、返してくださいね。」

 商人は、少し大きめな声でそう言った。



「鞄の中身が気になった通りすがりの人が、少し覗いたんだって。そしたらね、・・・」

「なにそれ、終わってるじゃんww」


 続くかもしれない、作品集。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かして 鷲ノ手 @28TH

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ