"異能被験者"二世

真白坊主

プロローグ

「全ての人が健康に暮らせる社会を創る」

――そのような大義名分は、もはや誰の記憶にもない。






Re:eV《リーブ》計画


 20XX年、約1000人の健康な若者が集められ、によって手術を施された。それは人類を次なる段階へと進めるための第一歩。若者たちにはそう伝えられ、彼らもまた、そう信じて疑わなかった。


 身体能力及び代謝の向上、とある流行り病への耐性の獲得など、多岐にわたる効果が見込まれるとされており、様々な分野の専門家がこの計画に携わっていた。




 手術後、1週間の経過観察と称し、若者たちは機関が管理する居住区での生活を義務付けられた。経過観察中は、如何なる理由があっても居住区の外に出ることは出来なかった。この扱いを不審に思う者も少なくなかったが、1週間異常が見られなければ帰宅できると伝えられたため、皆大人しく従った。




 1週間後、彼らは最後に1人1人診察を受け、経過観察は終了した。高額な報酬を目当てにやって来た者も、善意から計画に協力した者も、技術革新が起こる瞬間に立ち会いたい一心で参加した者も、約束通り居住区から出ることを許された。




 こうして、約500人の若者たちは、何事もなく元の日常に戻ることができた。


 25年後、この計画が原因で多くの者を巻き込む凄惨な争いが起こるなど、誰も思わなかった。

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