Pastel Pais (パステール パイース)

まるみ

第1話 ブッシュドノエル列車 【洋ナシタルト駅 行き】

現実の私は、仲間に入れてもらえないような子供だった。

私自身が人見知りで大人しい性格だったのもあると思うけど、とにかく「ひとりぼっち」だから、小さい頃からオモチャの人形が住む世界だけが、私の居場所だった。




女はパート従業員として働いていたが、居心地が悪くて何回も仕事を辞めていた。

これで、何回目だろう?そう彼女は考えてみたが、頭に浮かぶのは嫌な記憶ばかりで、ウンザリしてしまう。

親にも「普通で良いのよ」という言葉や「普通に働いてくれればいい」という言葉を言われ続けたが、どうも普通が難しいと感じていた。

一風変わっていると言われた事もあるくらいだが、それでも普通の子になる為、普通を見て、聞いて学んだ。

なんとか常識は身に着いたが、女性同士の仲間から外れてしまう事は何度もあった。

上手く生きる事が出来ない、仕事も出来ない…。

女は人生を「つらい」と感じる事が多かった。

そんな彼女は現在、駅のホームに立っている。

たった今、辞めた会社に挨拶に行き、作業着をクリーニングしてから返して来たのだ。

彼女は一人暮らしをしていたが、このままだと実家へ帰らなくてはならないが、なかなかそういう決断が出来ずにいた。

一人暮らしを始めた頃は、家具は大好きな白を基調とし、花柄やレースに囲まれた部屋を想像していたが、実際はお金の事を考えて、シンプルな家具でまとめられた部屋になってしまった。

子供の頃、大好きだったオモチャのような感じの部屋に住む事を夢見ていたが、とうとう叶わないまま、時が過ぎて行った。

それが、彼女の心残りとしてあるのと、親元へは帰りたくない理由として、「普通」を要求されるのが、ウンザリしてしまったのだ。

それで、一人暮らしという環境を手放すのに躊躇していたが、いつかは出て行かないといけなさそうだ。

女は電車を待つ間、一人で理想的な世界で生きたいと考えていた。

その時、都会…ほどではないが、人が結構、行き来する主要駅に立つ彼女の耳に突如、列車の走行音が聞こえてきたが、ただ単純に「電車が来たんだ」としか考えず、目の前で止まった黒い車体の列車になにも考えずに乗り込んだ。

他の人は気にも留めず、駅で各々、電車が来るのを待っている。

見慣れない列車に乗り込んだのは、彼女一人だけだったのである。

列車はドアが閉まり、再び動き出したが、駅を抜けた辺りで白い煙のなかに消えていき、女が立っていた駅ではアナウンスが流れ始め、人々はそのアナウンスを聞き、そろそろ電車が来るのだと知り、ベンチで座っていた人が立ち上がったり、列を作っていた人の中には、電車が来る方向を見つめる人もいたが、今の光景に気付いた人は誰もいなかったようだ。

そうして彼女は「ブッシュドノエル列車」に乗り込み「洋ナシタルト駅」に向かったのである。


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