流転 第4話

 駅の前にある小さな広場には木製のベンチが二つあり、僕はその内の一つに腰を下ろしていた。隣のベンチには男女四人が弾けんばかりの笑みを浮かべ談笑をしている。みたところ年も近そうにみえた。


 きっと今この瞬間の幸せを噛み締めているんだろう。僕もそうだったからよく分かる。そう、昨日までの僕はこの幸せがずっと続くものだと不確定な未来を勝手に思い描いていたのだ。


「僕は馬鹿だな…。」


 ぽつりと放たれたその言葉は、青々とした空の彼方へと吸い込まれように消えていった。


 拓馬と電話を終えてから約三十分程経った。LINEの文面から読み取るともうすぐ到着するそうだ。


 この時間も有効活用しようと、何度も海月に電話を掛けた。何度も。何度も。

 だが、変わらず応答はない。


 とりあえず拓馬達と合流してから行く場所は決めていた。海月のお母さんはまともに取りあって貰えなかったと言っていたが、もう一度警察に頼み込んでみようと思ったのだ。


 子供の僕たちだけで探すにはどうしたって限界がある。ここは捜索のプロでもある警察の人の力を借りるのが一番早い気がした。


 必ず海月を見つけてみせる。

 固い決意の元、手にしていた携帯を固く握りしめた。


 駅の改札口の方へと視線を向けると、人が流れるように出てきている。恐らく電車が到着したのだろう。LINEの文面通りであればこの電車か次辺りに拓馬と静香は乗っているはずだと、人混みを縫うように視線を向け続けていると二人の姿を見つけた。

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