LOVE・LOVE・MINDGAME

早坂 実

第1話 とある授業にて

 「1582年、この年に何があったのか覚えているやつはいるか?」

 6月の梅雨が終わり、7月に入るこの時期は、少しずつ暑さが増していた。普段から、授業に集中できずにいた者は、更に集中できなくさせる。

 絶対、勉強したくない……。そんな雰囲気が漂う中、歴史の先生、齢50のベテラン 田中 重文は、構うものかと授業を続ける。

 そんな中、片手でペンを回しながら、答える者が現れた。

 「それって、織田信長に謀反したやつじゃなかったっけ?ほら、えーっと、明るい漢字のやつ。」

 「明るい感じってなんだよ、それ。その当時のパリピみたいなやつか。」

 「そういえばさ、こないだSNSでさ、JUMBLEの曲でパリピが踊ってたよ。マジウケるんだけど。変な動きしててさ。」

 「見た見た!意外と、体幹が良いので、びっくりした!」

 「品がないものばかり見て……。少しは、勉強したらどうですの?」

 「いやいや、SNSとはいえ、馬鹿にはできないよ。そういった人たちが、文化を作ったり、経済効果を生み出したりしているんだよ。まぁ、あまり認めたくない気持ちもわかるけど……。」

1582年の出来事をきっかけに、瞬く間に雑談ムード一色に変化してしまった。

 「うるさいぞ!黙らんか!SNSだか、パリピだか、よくわからんワードばかり使いおって。集中しろ!……、すまん井藤紗季、1582年の出来事は思い出せたか?」

 井藤 紗季さき、この質問にいち早く答えた者である。ロングの黒髪で、目は大きくきりっと上がっている。肌は白く、いわゆる美人である。左肘をテーブルにつけ、回していたペンで田中先生を指す。

 「重じい、思い出した!明智光秀が織田信長を討った。」

 「そうだ。よく、思い出したな。そして、それから……」

 田中先生、重じいの声を鋭く遮るようにして、言葉を発した。

 「あの毛利を討つため、京都に滞在したところってやつか?」

その声の主は、藤崎 三重みえ。紗季を茶化し、雑談のきっかけになった者である。ボブカットのショートヘア、紗季ほど鋭い目はしていないものの、大きく透き通った目をしている。鼻は、少し高めで、彫りの深い顔立ちをしている。

 「本能寺!HONJOJI! 」

そう言い放ったのは、万年青おもと礼。普段から、SNSのチェックは欠かせない。自身もSNSに写真をアップして、フォロワーさんを獲得している。そんな彼女は、ロングに少しだけ光悦茶混じりの髪の色をしている。唇には、一重梅色のリップを施している。他の3人と比べて、少し派手さを見せる彼女は、現代色に染まりながら、意外とクラシックな考え方を忘れない。そんな独特な雰囲気が人々を魅了させる。

 「そんな信長公は、締まった体つきをしているらしいって。声も甲高いとか、何とか言っていた気がするよ!」

 先ほどから、体について述べるのは、枳殻からたち万居まい。髪はロングだが、御団子にして結んでいる。丸い目をし、可愛い雰囲気を醸し出す彼女は、何をやっているかよりも、体つきが気になってしまうらしい。

 「信長は、人心掌握について長けていたそうですね。今では、心理テクニックの一つとして使われているものですが、それをあの時代で使っていたそうです。やはり、合戦の中で、様々な経験をされた方は考え方が違います。」

 そう冷静に分析する彼女は、石川 芍薬しゃくや。髪が、ストレートで長い。毛先は、彼女の入念な手入れによって、まとまり、ツヤのある髪に仕上がっている。細い銀縁の眼鏡をかけて、目の下にほくろがあるのが特徴である。背筋を立て、綺麗に座る姿が、より彼女を美人に仕立て上げる。

 「しかも、信長は、経済、経営のセンスがありますしね。一向一派を討伐するのは、その土地を支配し、どうしても船運を手に入れたかったと。歴史上の天下人は、土地を支配しても、その先のことを考えなくちゃ。織田信長といい、平清盛といい、本当に凄いと思います。」

 ビジネスの手腕に注目する彼女は、江風かわかぜ万智。バードテールを施した髪に、大きなまん丸い眼鏡をかけている。鼻筋は通っていて、ツインテールという子供っぽいイメージがある中、しっかり成長した年相応の雰囲気を見せている。


 クールビューティー   井藤 紗季 通称 サキ

 サバサバ系       藤崎 三重 通称 ミエ

 ハイブリットギャル系  万年青 礼 通称 レイ

 ザ・筋肉女子      枳殻 万居 通称 マイ

 お嬢様     石川 芍薬 通称 シャク

 妹系!?        江風 万智 通称 マチ


彼女達6人は、一見、普通の女子高生だが、それぞれが異色な経歴を持っている。しかし、それは、彼女達の間で知っていることであり、他の高校生達は知らない。

 そんな姿を見て、そのクラスのある男子高校生は、ぼそっと呟いた。


「あいつら、いつもうるせえな~。あいつらが、喧嘩になったらどうなるんだろう。……あまり、考えたくないわwww。」

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