第59話 最後の戦い
東三条結子は才能ある魔術師だ。そして実戦経験も豊富。 魔術師に襲撃されたときや、白川家の部隊に襲われたとき、結子が勝てなかったのは、複数人から不意打ちを受けたからだ。
一対一で、油断した相手なら、たとえ白川嫡男だろうと、結子には勝機があっった。
白川嫡男は油断して、結子をただの子供を生む道具として扱おうとした。そして、自らの死を招いた。
おそらく即死だろう。もはや白川嫡男さらに白家家当主はもはや、この世にいない。葵もエミリアも呆然としていた。
父と兄が目の前で死んだのだから。一方、透子は母親の凶行に震えていた。
白川家の二人は死んでも仕方のないような人間だった。それは事実だが、一方で、結子の目的が問題だ。
和樹ははっと我に返った。
白川嫡男の身体から、無数の怨霊が飛び出したからだ。だが、その怨霊たちは誰にも襲いかからなかった。
結子の支配下に入ったからだ。結子はふふっと妖艶に笑う。
「これで、私の栄光は蘇るわ。祝園寺なんて、東三条の、いえ、私にひざまずくべき存在なの」
「お、お母様!? お母様は和樹に従うって言ったじゃない!」
透子が叫ぶが、結子は娘に柔らかい表情を浮かべ、首を横に振った。
「まさか。私はもともと和樹くんの奴隷になるつもりなんてなかったわ。もちろん、白川家に従うつもりもなかったの。あれはすべて演技。私の目標は、私の導く東三条家で、この世界を支配することなの」
「そ、そんな……! 怨霊を使ってそんなことをするなんて、ダメよ! 魔術師のやるべきことじゃない!」
「魔術師の倫理なんて知らないわ。私を冷遇した実家の西桜木家、私を利用しようとした学生時代の友人たち、私を弄んで捨てた男、それに私を愛さなかった夫。すべて、私の前にひれ伏せさせてあげる」
「和樹はどうするつもりなの!?」
「祝園寺くんは別に生かしておいてあげるけどね。種馬の奴隷にしてあげる。透子が望むなら、あなたの
「か、和樹は
「それは私が決めること。あなたは私の大事な娘で次期当主だけれど、今の当主は私なんだから」
結子は聞く耳を持たないようだ。
そのとき、観月が和樹の服の袖を引っ張って、耳打ちした。
「結子さんをこのまま野放しにするわけにはいきません。きっとひどいことをたくさんするつもりなんです」
「なら、結子さんを……倒すしかないのか」
「はい。力尽くで止めましょう」
だが、結子は白川家の力を手に入れて強大になっている。
それなのに、和樹に勝てるだろうか?
観月は微笑んだ。
「大丈夫。兄さんは、わたしの大好きな最強の魔術師でなんですから。きっと勝てます」
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