第58話 東三条結子
和樹たちは地下牢から引き返し、白川慶男の私室を目指すことにした。幸い、透子と朱里の服は牢内に置かれていたので、二人はそれを少し照れながら着用した。
他の牢の女性たちもできれば助けたいが、その時間はない。
白川慶男は、結子を道具として、つまり子供を産ませるために、連れて行った。乱暴されるのは時間の問題だ。
(間に合うかどうか……)
和樹たちは急いで階段を駆け上り、地下牢を出る。
「白川の嫡男の部屋は……?」
「二階です!」
和樹の問いに、エミリアが勢いよく答える。エミリアにとっても、白川嫡男は憎い相手のようだ。
「いろいろ……セクハラされたんです」
エミリアが金色の美しい眉をひそめる。異母妹とはいえ、エミリアはすさまじい美少女だし、そういうことがあってもおかしくないのかもしれない。
葵とエミリアでは容姿も違うし、母が違えば兄妹という意識も薄くなるだろう。
とはいえ、慶男が鬼畜なのに違いはないが。
ともかく、和樹たちは二階の白川慶男の部屋の前まで来た。
和樹、観月、透子、朱里、エミリア、西桜木香織、西桜木詩音の総勢七人。さらに西桜木家の女性魔術師五人がいるが、彼女たちには廊下の端と端を警戒してもらっている。
背後から白川家の魔術師に攻撃されるのを防ぐためだ。
「これが最後の戦い……ですね」
観月がつぶやく。和樹はうなずいてみせた。透子はといえば、自分を辱めようとした白川嫡男への仕返しに燃えていて、瞳をめらめらと輝かせている。
「和樹がいれば、絶対に勝てるわ」
「はい。兄さんがいてくれるんですものね」
観月と透子はそう言って、和樹を見て微笑んだ。
そして、和樹は勢いよく部屋の扉を開いた。二階部分は洋室になっているようで、大金持ちの豪邸らしいおしゃれな白いドアだった。
扉を開けたところには、押し倒された結子と、彼女を襲おうとする白川嫡男がいる、と和樹は想像していた。
ところが――。
その部屋では、中年の男性の体が床に転がっていた。ナイフで胸を刺されていて、明らかに死んでいる。
一度会ったことのある白川家の当主、つまり慶男・葵・エミリアの父親だ。
そして、慶男も怯えた表情で床に転がっている。こちらはまだ生きているが、彼の前にナイフを持った美しい女性がいた。
彼女は一糸まとわぬ姿で、その身体をさらし、冷たい氷のような表情で慶男を見下ろしていた。
「この私に――西桜木家の千年に一度の天才と呼ばれた、私と二人きりになったのが間違いだったわね? まあ、途中からやってきたお父上含めて、私には敵わなかったわけだけれど」
どうやら、結子は白川嫡男たちを魔術で返り討ちにしたらしい。そして、当主の方は殺した。
「よくも父上を……!」
「ああ、あなたもお父上同様に死んでもらわないとね」
「や、やめてくれ! お、俺は何も悪いことはしていない!」
「私と、私の大事な娘たちを凌辱しようとしておいて? 悪いことはしていない? それはおかしいわね」
結子は東三条家の女主人だったころの威厳を取り戻していた。
スタイル抜群で20代前半と思うほど若々しいので、裸でもかえって神々しくすらある。
「ま、待て。俺を殺せば、まずいことになる……!」
「先に仕掛けてきたのは白川家。あとでいくらでも言い訳はつくわね」
「そうじゃない。俺は白川家の魔術師を通して怨霊を大量にコントロールして使役している。今、俺が死ねば、その怨霊たちが解放されるぞ! 京都全体を破壊し尽くすほどの量がいる。取り返しがつかないんだ!」
「それが?」
「え?」
「それなら、あなたたちの使役する怨霊も、あなたの力もすべて私のものにするわ。そうすれば、私はふたたび七華族の女主人の座を、いえ、いずれ七華族すべてを支配するだけの力を手にできる……!」
結子はそう言って、白川慶男の心臓をナイフで刺した。
<あとがき>
意外な方向に進みますが、新たなハーレムの布石です……!
面白い、結子がどうなるか気になる! と思っていただけましたら、
・☆☆☆→★★★
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