第26話 反撃開始!
魔術師の男たちは七人はいた。
敵が一人だけだった前回とは違う。
それでも、戦わざるを得ない。
和樹が負ければ、それは結子のみならず、他の四人の少女が拉致されることを意味する。
観月たちが陵辱されて妊娠するなんて、そんな未来を和樹が許せるわけがない。
震えて怯える少女たちをかばうように、和樹は立つ。
そんな和樹を男があざ笑う。
「前回のようにはいきませんよ。せいぜい我々に惨めに敗北し、妹や婚約者が僕らのものになる様子を見ていなさい」
「惨めに負けるのはあなたたちの方だ!」
「威勢がいいですね。だが――」
男たちの一人が、裸に剥かれた結子を連れ去ろうとする。結子は「やめてください……! 放して……」と懇願するが、男たちに無理やり四つん這いで歩かされていた。
そのたびに大きな胸が揺れ、結子は屈辱の涙をぽたぽたと流す。
もうひとり、床に倒れていた女子大生の時枝朱里も、意識は取り戻していたが、男たちに拘束されていた。
朱里も真っ青な顔で、「助けて……和樹くん」とつぶやいていたが、平手打ちをされて身体をまさぐられ、抱きかかえられてしまう。
「先に使える人間は使っておきましょう」
男は下卑た顔で言う。
なんとかして早く助けないといけないが、うかつには動けない。
和樹は霊力を発動して、男の一人を倒す。
だが、そのあいだに、結子と朱里は廊下へと連れ出されていた。そして、別室の扉が開く音がして、バタンと閉じる。
その後、結子と朱里の「ダメええええ」「いやあああああああっ」という甲高い悲鳴が聞こえた。
急がなければ手遅れになる。結子と朱里の二人は男たちに手籠めにされ、本当に子供を孕まされてしまう。
和樹は結子たちを助けたかった。どんな事情があるにせよ、透子と桜子の姉妹にとって、結子たちは家族だ。
自分に好意を寄せる二人の少女が、悲しむところを見たくない。
和樹は深呼吸して、次の魔術師を薙ぎ払った。炎の霊力でなんとか敵の魔術師を倒す。霊力には木火土金水の五行の属性がある。
和樹はずっと霊力がなかったから、その属性のコントロールもできない。だが、霊力の大きさで二人目までは乗り切ることができた。
だが、残り三人はそう簡単にはいかなかった。
男の一人が光る触手のようなものを放つ。霊力の障壁で防ごうとしたが、一撃目は防げたが、背後からの同様の攻撃は防げなかった。
和樹の足が触手に絡め取られる。
(まずい……! このままだと……)
負ける、そうすれば観月たちの運命は……子供を生む道具とされる。
和樹は焦り、反撃しようとするが、その焦りが良くなかった。手元が狂い、反撃のために霊力を込めた巨大な球を外してしまう。
「祝園寺和樹くん……ここまでのようですね!」
男が霊力を用いて、和樹にとどめを刺そうとする。触手のせいで避けることもできない。
和樹は次の瞬間の衝撃を想像し、目を閉じた。
だが、霊力は和樹に当たらなかった。
「和樹に守ってもらっているばかりじゃ、ないんだから!」
和樹の元婚約者、透子が、和樹の目の前に立ち、霊力を行使していた。透子のスカートの裾がふわりと翻る。
驚いて和樹が透子を見つめると、透子は振り返り微笑む。
「私だって、まだ和樹に必要としてもらえるもの。一人で戦って倒せなくても、二人なら勝てる……!」
「わ、わたしもいるんですからね! わたしたちは三人です!」
観月が慌てた様子で、和樹に近づくと足の触手を浄化して消滅させた。
ともかく、これで形勢逆転だ。
和樹は観月たちに微笑む。
反撃開始だ。
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