女子高生万歳

宮脇シャクガ

第一部 人生は死ぬまでの暇つぶし

歴史的に見て、若年女性が高等教育を受けられるということは尊いことである。若年女性という価値のつけられない存在が、労働もせず、妊娠・出産、子育てもせず、戦火や暴徒の恐怖にさらされずして毎日平和に学校に通えて、高等教育を受けられ、それが一般的な社会的ステータスとして認識されている現代は人類の歴史上、稀有なる輝かしい時代であると言っても過言ではないだろう。


人類は歴史的に、戦争か、戦争の準備か、そのどちらもする必要の無いときには暇つぶしをしてきた。暇つぶしか国家総動員体制でなければ、女性の頭脳を積極的に活用しようとしなかったのである。

これは歴史的な損失であり、古代ローマの叡智を受け継ぎ、中世には栄華を誇ったイスラム圏の強国が女性の教育を禁止した結果、現在どのようになっているかを見れば明らかである。

(厳しく戒律を守る国から、イスラム法の解釈の緩い国まで様々なグラデーションはあるものの)


では、暇つぶしに女性が活躍した時期や場所はと言えば、統一中国や、日本なら平安時代、江戸時代。中世ではイスラム圏がその傾向が強く、ルネサンス期や近代の覇者となった頃のヨーロッパ、そして現代のアメリカである。

時価総額上位10位くらいまでの企業のほとんどがアメリカの言うなれば暇つぶしの役に立つ企業であることからもそのことがわかる。


暇つぶしをするためには社会に余力がなければ出来ない。

例えば、100人の村なら5人の老人と10人くらいまでの妊婦、病人、怪我人、その他の直接生産をしない人を養うことができる。

10倍、100倍になるとさらに養える割合が増え、スケールメリットと人口ボーナスにより、さらに拡大・再生産のペースも上がる。

マルサスの言うところの土地の生産力の限界までだ。

と、同時に富の集約や貧富の差の問題も発生するが、人類の発展のためには必要なのでここでは置いておく。


では生産力が足りない場合、どうすれば良いか?

一番手っ取り早いのは持っているところから奪うことである。

RTS系のアプリをプレイするとよく起こる事態に、「資源を開発するための資源が無い」という状態がある。

これは人類の歴史上、常に起こっている状態である。

奪うため、奪われないために軍備を整える。これが常態である。

そのため、先述の若年女性が安心して勉強できる環境というのは替えがたいものなのである。


さて、真面目に戦争無しで生産力を上げたいならどのような立地がお得か?

近くに鉱物の取れる半農半漁の港町ではどうだろう?

海からは塩や食料や肥料がとれる。それらを使って貿易もできる。

同じ道徳や価値観の人とでないと貿易がしにくい。

船板一枚下は地獄という独特の死生観が生まれる。

航海術や船の建造技術が必要とされる。

博打、金融、保険業(近代統計学が生まれるまでこれらは同様のものとみなされた)が発達する。


つまり、神学、哲学、天文学、数学。

アカデミーの必須の学問である。

そう、当然のことながら高等教育を施す施設がなければたくさんの人が高等教育を受けられないのである。

日本では、仏典の研究と天文学がそれらにあたるだろうか。

宗教と切り離された教育施設としては足利大学を待つことになる。

さらには庶民の女子が学べる学校ともなると閑谷学校まで待たなければならない。


ともあれ、いわゆる普通の女子が学べる学校が日本にできた。


続きは次回へ譲ろう

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