永遠ノ愛

桃井桜花

桔梗ノ花言葉

 時は戦国時代。


 一人の少女はその未来からタイムスリップをしてきた。最初は不安に押し潰されそうになっていたが、次第に仲間が出来るようになり、乱世の世を生き抜いてきた。少女は、。そしてに仕えた。天下統一を果たした豊臣秀吉に仕えているのではなく、石田三成に仕え、島左近たちと共に三成を支えてきた。そんな少女には、想い人がいた。


 大谷吉継おおたによしつぐという人物だ。吉継も同じく、少女を想っていた。だが、互いに相棒として戦場の中をかけ、共に戦ってきた。少女は、不老不死という能力を平安時代に厄災を祓っていたという瓜二つの少女から授かっているため、歳を取らず、永遠に死ぬことが出来ない。吉継は人間であり、歳を取り、やがて死を迎えてしまう。少女は時代を巡ることによって孤独を感じつつあった。


 ある日、少女は吉継と共に縁側に座り茶を飲んでいた。茶は苦味があるが、ほんのり甘さを引き出しているため、少女の口には丁度いい甘さである。少女は茶を飲み一息つくと吉継に話しかけた。


「ねぇ、吉継」


「なんだ?」


「私は、不老不死で死ぬことが出来ないし、歳を取ることも出来ない」


「あぁ」


「吉継たちは、歳を取ることも出来るし、やがてこの世からいなくなってしまう」


「そうだな」


「そうなったら、私……また独りぼっちなのかな」


 少女は、平成時代にいた頃兄を結核で亡くし、その後両親は離婚。母親の実家に引き取られたが、祖母に虐待などをされ孤独を感じ、生きていたのだ。吉継は少女の事情を知っているのと同時に、吉継自身も幼い頃身体が弱く、外も出れずに家に引きこもっていた時期があり、孤独を感じていた。そのため、少女の気持ちは身に沁みて理解している。


 吉継は庭に咲いていた一輪の桔梗摘み少女に渡した。


「桔梗?」


「あぁ。俺の庭だから気にすることはない」


「ありがとう」


「……桔梗の花言葉を知っているか?」


「知らない」


「そうか」


「桔梗の花言葉って?」


「そのうち分かる。今は知らなくてもいい」


 吉継は、少女にそう言った。この時の少女は、桔梗の花言葉を知らずにいた。だが、その花言葉を知ることになる出来事が数年後起こった。


 。豊臣秀吉が亡くなり、次の天下人は、豊臣秀吉の息子である幼い秀頼か、徳川家康かで世を騒がせていた。  


 三成は、豊臣の世を終わらせたくないと自分自身が秀吉の跡を継ぐことを決断し、徳川と石田は天下の分け目を起こすこととなった。少女は、主君の三成についていくことにした。吉継も三成の無二の親友として、豊臣軍の西軍についた。少女の兄・藤堂高虎は徳川軍の東軍につき、浅井にいた四人はバラバラになった。


 そして、関ヶ原の戦い当日。


 少女は、吉継たちとは別行動で、刀を振っていた。すると、伝令で小早川秀秋が東軍へと寝返り、吉継の軍へと攻撃し始めたと聞いた少女は、すぐさま吉継の元へと馬を走らせた。


 少女が吉継の元へ着くと、兄の高虎が吉継の背後で刀を振りかざそうしていた。少女は吉継の名前を叫んだ。吉継は少女に気付き、笑顔でこう言った。


───幸せになれ


 と。吉継はそう言うと高虎の振りかざした刃で首を跳ねられてしまった。


 少女は、兄の高虎を一切恨もうとしなかった。この世は戦国時代。皆、家のために戦っている。いつ何かがあるかわからない。その事を少女は身に沁みて知っている。だから、高虎を恨むことはしなかった。少女は無言で高虎の横を通りすぎようとした。高虎は妹の名を呼ぶと、少女は笑顔で後ろ振り向き、最後にこう言った。


───貴方が兄で良かった!


 と。後に少女は関ヶ原の戦いが終え、関ヶ原へと足を運んだ。吉継の墓があるからだ。相棒として、時には師弟として、友として戦場をかけた仲だった。だが、互いに自分の想いを伝えることはしなかった。先にこの世から去っていくのは、吉継だったからだ。呪いでもない限り、共にいることは不可能だろう。そう思った吉継は最期に少女に呪いをかけた。少女は吉継の墓へ来る前に、桔梗の花言葉を調べていた。そして、花言葉がわかり、少女はこの関ヶ原へと足を運んだ。


 少女は、一輪の白い百合を置き、墓から去っていった。


 桔梗の花言葉は



───永遠の愛。


 


 


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永遠ノ愛 桃井桜花 @ouka0128

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