相棒のロボット刑事にフォールインラブしたけど、相手は無機物だから永遠にアウトオブ眼中だよねって話。

橋元 宏平

ロボット刑事と女刑事

第1話 Partner

 警視庁が管轄する某警察署刑事課所属、田中たなか穂香ほのか巡査じゅんさとは、私のことだ。


 高校3年の秋に警察官採用試験を受け、警察学校卒業と同時に、憧れの警察官になった。


 中肉中背、顔も人並み(と、自分では思っている)、仕事も人並みの23歳。


 特にこれといって何の取り得もない私が、上の人間に呼び出された。


 上というのは、国家公務員クラスのお偉いさんだ。


 地方公務員の巡査である私から見たら、超エリート。


 巡査は、警察法第六十二条に規定される警察官の最下位の階級。


 警察官は、九つの階級がある。


 下から「巡査じゅんさ」「巡査部長じゅんさぶちょう」「警部補けいぶほ」「警部けいぶ」「警視けいし」「警視正けいしせい」「警視長けいしちょう」「警視監けいしかん」「警視総監けいしそうかん


 刑事ドラマで良く見る「巡査長じゅんさちょう」ってのがあるけど、あれは階級じゃなくて、ただの職名。


「バイト」と「バイトリーダー」くらいの違いで階級に差はなく、給料も同じ。


 それはさておき。


 呼び出された小会議室には、三人の男が立っていた。


 スーツ姿で、神経質そうな細身の中年男。


 白衣姿で、小太りの背が低い中年男。


 スーツ姿で、長身の若い男。


 中でも目を引いたのは、若い男だった。


 年齢は、二十歳そこそこだろうか。


 何故か無表情で、どこを見て、何を考えているのか分からない。


 ボケーっと、つっ立っているので、一見ちょっとアホっぽい。


 しかし、かなりの美形でスタイルも良い。


 まるで、モデルのようだ。


 私は三人の前に立つと、姿勢を正して敬礼する。


「刑事課所属、田中穂香巡査です」


「初めまして、田中君。私は、警視正の高橋だ。こちらは、東京工科大学の鈴木准教授」


 細身の中年男は、キャリア組の警視正だった。


 警視正から紹介された准教授は、若い男を指差しながら口を動かす。


「――」


「……はい?」


 准教授は何かを喋ったようだったが、声が小さすぎて聞こえなかった。


 少し近付いて聞き返すと、准教授はヘッドセットマイクを取り出して装着した。


『説明しようっ! ぼくが最新鋭の技術を駆使して作った「汎用人型試作機」通称、「加藤かとう太郎たろう君」だっ!』


「うわっ、ビックリしたっ!」


 拡声器から発せられる声の大きさとテンションの高さに、私は飛び上がりそうなほど驚いた。


 そんな私に構わず、准教授はハイテンションのまま続ける。


『「加藤太郎君」は、日本のロボット工学の第一人者である「加藤かとう一郎いちろう」氏に、ちなんで命名したっ!』


「はぁ」


 正直私は、ロボット工学に何の知識もない。


 興味もなかったので、あいまいに返事をするしかなかった。


 それにしても、これがロボットなのか。


 言われないと分からないくらい、人間にそっくりだ。


『「加藤太郎君」は警察のデータを転送したり、尾行や聞き込み、犯人確保も出来る優れものだっ!』


「へぇー、スゴいですね」


 私は、素直に感心した。


 そんな高度な技術があるなら、人間の刑事なんていらなくなる。


 人間と違って給料はいらないし、不眠不休だって大丈夫。


 その上、情にも流されない。


 データが完璧なら、誤認逮捕もない優秀な警察官となるに違いない。


 警視正がひとつ頷いた後、勢い良く私を指差す。


「そんな高性能ロボットを、君にたくしたいと思う」


「ええーっ!」 


 その言葉を聞いて、驚きのあまり叫んでいた。


 はたと、気が付いて問う。


「なんで、私なんですか?」


「君は今まで手柄を立てたことがない、何の取り得もないひら(組織で何も役職についていない普通)の巡査だ。そんな平の君と組ませて、性能を観察しようという。まぁ言うなれば、試作機プロトタイプの試運転だ」


「はぁ」


『平』と言われて、私は気のない返事をした。


 確かに、一番下っ端の巡査だけど。


 ちょっとイラっとくる、その言い方。


 私の態度を気にすることなく、准教授は嬉々として話を進める。


『「加藤太郎君」は、まだまだ試作段階でねっ! 扱いは多少面倒臭いが、上手く使えば平の君にも、手柄が取れるだろうというものだよっ!』


「そう、『平平』言わないで下さいよ」


「事実なのだから仕方あるまい。口は慎みたまえ」


「すみません」


 私が渋々謝ると、警視正は不機嫌そうな表情のまま、准教授に「例のものを」と声を掛ける。


 准教授は楽しそうな笑みを浮かべ、ジェラルミンケースを開いて机の上に置く。


 ジェラルミンケースの中には、衝撃吸収材に、6枚のメモリーカードとミニパソコンが、はめ込まれていた。


 メモリーカードは、10円玉くらいの大きさで、赤青黄緑白黒の6色。


 准教授はメモリーカードを一枚取り出して、私に見せつける。


『このメモリカードには、それぞれ捜査に適したデータが入っているっ!』


「データ?」


 オウム返しすると、准教授は「良くぞ聞いてくれた」と、言わんばかりの表情を浮かべる。


『赤いメモリカードには、犯人追跡用のデータが入っているっ! 銃をガンガンぶっ放して犯人を追い詰め、確保をする為のものだっ!』


「そんなことしていいんですかっ? 警察が!」


 私の話を聞いているのかいないのか、准教授はメモリーカードを次々と取り出して見せる。


『青は聞き込み捜査用、黄色は張り込み捜査用、緑は尾行捜査用に使うんだっ!』


「なるほど、捜査に合わせて挿れ替えるんですね」


 ジェラルミンケースには、あと二枚残っている。


 色は、白と黒だ。


 私は、白のメモリーカードを指差して問う。


「この白いのは、何用ですか?」


『ああ、それは「お喋り太郎君」』


「『お喋り太郎君』?」


 准教授は白いメモリーカードとミニパソコンを、ジェラルミンケースから取り出した。


「加藤太郎君」に何か細工をした後、ミニパソコンを叩きながら准教授は続ける。


『このパソコンで無線通信し、直接話させたい内容をタイピングするっ! と――』


『やぁ。加藤太郎君だよ』


「おお、喋ったっ」


 今まで棒立ちだった「加藤太郎君」が、無駄に良い声で喋った。


『ちなみに、メモリの切り替えは、ベルトの穴に差し替えて行うっ!』


 准教授は、メモリーカードとミニパソコンをジェラルミンケースに戻すと、眉間にシワを寄せて目を閉じた。


『本当はメモリを切り替える度に、ド派手な効果音と音声が鳴るようにしたかったのだが、上から「そんなもんはいらん」の一言で、却下されてしまったっ! 実に遺憾いかんであるっ!』


「それは、私でも却下すると思います」


 私は呆れて、上の人の気持ちを察した。


 すると、准教授が拳を握り締めながら力説する。


『何を言うかっ! ベルトを操作する度に、ゴージャスな音が鳴ったらカッコイイじゃないかっ!』


「でも、いりませんよね?」


『まぁね』


 准教授も、スン……と急に静かになって認めた。


 准教授は気を取り直して、「加藤太郎君」の顔を指す。


『ちなみに、スキンは、ほとんどの日本人が好感を持つ好青年にしてあるっ!』


「何故ですか?」


『考えても見ろっ! ブッサイクな警察官に尋問じんもんされるより、イケメンな警察官に尋問された方が、嬉しいに決まっているだろうっ!』


「ああ、まぁ、そうですね」


 正直、私は外見などどうでもいいと思ったが、妙に納得してしまった。


 准教授は腕組みをしながら、「加藤太郎君」の周りを意味もなく回り始める。


『実は、女性タイプも完成間近とされているのだが、いかんせん上手くいかなくてね』


「と、いいますと?」


スキンボイスをどうするかで、研究員達の間でモメにモメているのだっ!』


「そんなことですかっ!」


 私がツッコむと、准教授は声を荒げる。


『そんなこととは何だっ、そんなこととはっ! 美少女アイドルに「ねぇ、お願い、あなたのことが知りたいの。教えて?」なんて、上目遣いで可愛くおねだりされてみろっ! ほとんどの男は、洗いざらい話してしまうわっ!』


「そんなんでいいんですかっ!」


『何を言うか! 可愛いは正義だっ!』


「警察がこんなだなんて、日本の未来は暗いですね」


 ぐったりと肩を落とすと、警視正は「加藤太郎君」の肩を叩いた。


「そうっ! こんな時代だからこそ、ロボット刑事が必要なのだよ!」


「今の話の流れで、よく今の結論に結びつきましたね」


 呆れた口調で呟いた私を置き去りにしたまま、准教授は「加藤太郎君」の足を指す。


『それから「加藤太郎君」は、時速4キロで移動が可能だっ!』


おっそっ! それじゃ、犯人に逃げられちゃうじゃないですかっ!」


『大丈夫だっ! 犯人追跡メモリ挿入時のみ、スプリンタ並みの走行が可能となるっ! 一般人が逃げられるスピードではないっ!』


「おおっ、それは頼もしいですね」


『そうだろう、そうだろうっ!』


 私の反応に、准教授は満足げに胸を張った。


 そこで警視正が、静かに口を開く。


「ところで田中君。君は、自動車の免許は持っているかね?」


「はい。オートマ限定ですが、今のところ無事故無違反で、ゴールド免許です」


 運転免許証を取り出して見せると、准教授は大きく頷いた。


『それは何より! 「加藤太郎君」は、車の運転が出来ない! 基本徒歩だっ!』


「車両運転技術は、想定しなかったんですね」


『「刑事デカは足で稼げっ!」が、コンセプトだっ!』


「つまり、元々、想定していなかったんですね?」


『まぁね』


 私が准教授を問い詰めると、彼はとぼけた顔で言った。


 最後に、准教授は週刊少年雑誌並みに分厚い取扱説明書と、ジェラルミンケースを、私に差し出す。


『詳しい操作内容は、この説明書に書いてあるっ! 熟読して「加藤太郎君」を上手く使いこなしてくれっ! 健闘を祈っているぞっ!』


「うわ……これ、全部読まなきゃダメなんですか?」


 私はずっしりと重い説明書を手に取って、パラパラとページをめくった。


 文章の羅列に、早くも頭が痛くなってきた。


 警視正は私を指差すと、意味深長な薄笑いを浮かべる。


「そうそう。太郎には、カメラやマイク、GPS(グローバル・ポジショニング・システム=現在位置を知るシステム)機能なども搭載されている。必然的に、君の行動も監視させてもらうことになるな」


「げげっ! マジですかっ?」


「大マジだ。では、頼んだぞ」


 私は重いジェラルミンケースと取扱説明書を持たされて、「加藤太郎君」とふたり、小会議室に取り残された。


 やれやれ……仕事なら、やるしかない。


「さぁて、お仕事開始だ」


 椅子に腰掛けると、机の上に説明書とミニパソコンを置いた。


 説明書を読む限り、どうやら相当ややこしい構造のようだ。


 この「加藤太郎君」を使いこなすには、まず分厚い説明書を読破しなければいけないらしい。


 ミニパソコンを起動し、説明書を読みながら初期設定をする。


「ええっと、『まず初めに、初期設定をします。パソコンを起動し、アカウントの作成をクリックし、メールアドレスとパスワードを』……もぉ~、初期設定くらい、やっといてくれればいいのに」


 イラつきながらも、手元のミニパソコンで説明書の手順通り作業を進める。


 機械が苦手な私は、初期設定をするだけで30分もかかってしまった。


 こんな調子で、大丈夫だろうか? 今から不安。


 説明書を全部読むのは面倒……時間が掛かるので、必要そうな部分だけを掻い摘んで(要点を大ざっぱにとらえて)読んだ。


 よし、だいたい分かった。


 准教授が言っていた通り、捜査内容に合わせて、メモリーカードを入れ替える必要があるらしい。


 簡単な命令なら、口頭でも受け付けるようだ。


 ここまで理解するまでに、一時間が経過。


 使いこなせるようになるまで、一体どれくらい掛かるのか……果てしないものを感じた。


 とりあえず、軽く動かしてみよう。


「加藤太郎君」


『はい、穂香さん』


「おおっ! 返事したぁっ!」


 呼べば返事をするのは分かっているのだが、実際目にすると驚いてしまった。


 アカウント作成で「田中穂香」と登録してあるので、私を「穂香」と呼んだ。


 子供の頃に、初めて動くおもちゃを手にした時の感動と興奮が湧き上がった。


 試しに「歩け」「座れ」などを口頭で指示すると、「加藤太郎君」は言われた通りに動いた。


「加藤太郎君」を操作することは、思っていたよりも面白い。


 パイプ椅子に腰掛けた「加藤太郎君」の頭を、犬を褒めるみたいにわしゃわしゃ撫でる。


「スゴいスゴい、エラいぞ、太郎君っ!」


『何が、スゴイ、エライですか?』


「加藤太郎君」が、無表情のまま首を傾げた。


 なかなか良く出来ていて、人間臭い動きも出来るようだ。


「そういえば、簡単な会話も出来るんだった。えっと、134ページ……」


 説明書のもくじから『ロボットと会話をする』のページを引く。


 手始めに、説明書に書いてある例文通りに、話しかけてみよう。


「おはようございます、ご機嫌いかがですか?」


『おはようございます。私は元気です、ありがとうございます。そちらはいかがですか?』


「私も元気です、ありがとうございます」


「加藤太郎君」は淡々と、例文通りに返答した。


 私は感心するばかりだ。


「へぇー。話し掛ければ、言葉も覚えていくのか。なんか面白くなってきたっ」


 だんだん愛着が沸いてきた私は、良いことを思いついた。


「そうだ、あだな付けてあげる。うーん、そうねぇ……『タロちゃん』なんてどう?」


『僕はタロちゃんではありません、加藤太郎です』


 タロちゃんは、無表情のまま否定した。


 ご丁寧に訂正してくるあたりが、ロボットらしい。


 私はタロちゃんの頭を撫で回しながら、からかう。


「そんな硬いこと言うなよぉ~っ」


「田中、こんなところにいたのか。捜査会議、始まるぞ」


 私を探しに来てくれたのか、警察学校時代からの同僚の安藤が声を掛けてきた。


 厳つい風貌をしているが、気は優しくて力持ち。


 仲間からの信頼も厚い、良いヤツだ。


「うん、今行く」


 荷物をまとめて、慌てて立ち上がる。


 分厚い説明書と、ジェラルミンケースが異様に重い。


 持っているだけで、腕が鍛えられそう。


 数歩駆け出したところで、踏み止まって振り返る。


 タロちゃんは、パイプ椅子に腰掛けたまま「待機モード」になっている。


「おっと、ごめんごめん、置いてくとこだった。『加藤太郎君』立って。私について来て」


『はい』


 タロちゃんは指示した通り、後をついてくる。


 しかし、移動速度が時速4キロなので、かなり遅い。


 たった5部屋先の大会議室へ着くのに、ずいぶん時間が掛かってしまった。


「遅い」


「ごめん」


 安藤が小声で注意してきたので、私も小声で謝った。


 捜査会議は、もう始まっていた。


 私はミニパソコンを取り出して、タロちゃんに捜査データを覚えるように指示する。


 タロちゃんは、機械特有の音をわずかに立てながら、情報収集を始めた。


 収集されたデータは、ミニパソコンにも共有される。


 事件内容は、こうだ。


 一人暮らしのお年寄りを狙っての強盗殺人、および放火事件が多発している。


 すでに容疑者の目星がついていて、警察は写真を公開し、警戒を呼びかけているということだった。


 今のところ、犯人の動機は不明だが、犯人を確保して尋問すれば分かる話だ。


「各員、聞き込み捜査を行え。解散っ!」


「はいっ!」


 犯罪対策課長が一喝するように言うと、捜査員達は威勢良く返事をして一斉に立ち上がり、出口へ急いだ。


 私も慌てて、ミニパソコンを閉じて立ち上がる。


「あ~ら、穂香ちゃん。そこのイケメン君、誰よ? アタシにも、紹介してちょうだいっ」


 私の右頬に、誰かが人差し指を突き立ててきた。


 マニキュアコーティングされた硬い爪が、頬に刺さるからやめて。


 相手は確かめるまでもない、刑事課の同僚のキララさんだ。


 私服警察の「オネエさん」で、綺麗にお化粧しているけど、一発で男と分かる作り声と骨格。


 見た目に反して、頼もしい性格で、責任感や正義感が強い。


 これほど、刑事に向いている人もいないだろう。


「本当だ、初めてみる顔だ」


 興味津々といった具合で、同僚の井上も近寄ってくる。


 こちらは、田舎の子供みたいな純朴青年。


 仕事熱心で、犯人検挙率も群を抜いている刑事課のエース。


 私は、タロちゃんを指差して、みんなに紹介する。


「ああ。このロ……こちらは、今日から私の相棒になった『加藤太郎君』」


「へぇ、田中に相棒ねぇ」


 私の横にいた安藤は、少し意外そうな顔で私とタロちゃんを見比べた。


「加藤君、みんなに自己紹介して」


『はい、穂香さん』


 私が指示すると、タロちゃんは同僚達に友好的な笑顔を見せる。


 なんだ、こういう顔も出来るんじゃない。


 初めて見る表情の変化に、わが子の成長を見るようで嬉しくなった。


『初めまして、僕は加藤太郎と申します』


「俺は、安藤あんどう大介だいすけだ」


星埜ほしの雲母きららよ。気軽に『キララ』って呼んでね」


井上いのうえ義雄よしおです! よろしくっ!」


 彼らは次々と、タロちゃんと握手を交わした。


 キララさんが名乗った名前は、いわゆる源氏名げんじな(自分で考えた仮の名前)。


 本名は、「長谷川はせがわ源寿郎げんじゅうろう


 警察手帳には、本名が表示されている。


 前に、「源寿郎さんっていうんですか?」と聞いたら、


「やぁねぇもぉ! オネェに本名聞くなんて、失礼よっ!」と、怒られた。


 ちなみに、警察手帳には制服姿で素顔の写真が貼られているんだけど、オネェ姿の自撮り写真を上から重ね貼りして隠している。


 そんなことして良いのか。


「ちょっと、そこの。遊んでないで、早く行きなさい」


「あ、すみません」


 自己紹介が終わったところで、捜査本部長から怒られた。


「先行くぞ」


「ああン! もう、しょうがないわねぇっ。じゃあ、またね~☆」


「それでは、行ってきま~すっ!」


 三人は、本部長に急かされて、他の捜査員達と一緒に慌ただしく出て行った。


 彼らは、タロちゃんがロボットであることに気が付かなかったようだ。


 よほど意識して見なければ気付かないくらい、人間に近い。


 いや、言われなければ、気付けない。


 それほど、精巧に作られている。


 さすが「最新技術を駆使して作られた」というだけのことはある。


 さて、問題はこれからだ。


 タロちゃんの実力を、実践で試さなければならない。


 上手く使いこなせれば、犯人逮捕も夢ではないというが、本当だろうか?

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