【ー天災ー】45

 こういう時というのは先ず患者さんが優先な筈なのに、こう何で恋人の顔が浮かんで来てしまうのであろうか。


 喧嘩別れしたようなもんなんだし、もう忘れてもいいはずなのに何度も望の頭には雄介の顔が浮かんできてしまっている。


 それに向こうだって望に何も言わずに去って行ってしまったのだから、もういい加減浮かんで来て欲しくはない。


 そんな望の様子が気になったのか和也は、


「望……大丈夫かぁ?」

「あ、ああ、まぁな……」

「なら、いいけどさぁ」


 あれからどれくらい経ったのであろうか。 望と和也は必死になって患者さんの処置に当たっていたからなのか時間がどれ位経ったのかさえ分かっていない状態だ。 望達だってこれだけずっと働き続けているのだから体の方が限界に近い。


 そんな中でも次から次へと重症患者さんが運ばれて来る。 だから弱音も吐いていられなければ休んでなんかもいられない。 健康な自分達よりも今は患者さんの方が優先だ。 二人は体に鞭を打ちながらも動き続けるしか今はなかった。


 本当に今回の大地震でどれだけの被害があったのかさえも今は分からない状況だ。


 望達の場合には特にだろう。 寧ろあの地震から一歩も処置室から出ていなければテレビも見に行けていない。 そうこの病院はとりあえず自家発電が稼働しているからこそテレビが見れて情報が入って来るのかもしれないのだが、それさえも今は確認出来ない状況でもある。


 そして望と和也はどうにか地震があった夜には休む事が出来た。


 二人は体を引き釣りながら部屋の方へと戻って行く。

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