【ー天災ー】40
いつの頃からか望は雄介の事を好きになっていた。 確かに最初の頃は雄介の事は嫌いだった筈だ。 少なくとも誰かの為に早く仕事に復帰したいと、まだ手術して数日目で歩こうとしていた時、望に雄介は語ってくれていた。 そこで、こう何かが弾けたというのか違う仕事でも人を助けるって所に共感が持てると思ったからなのかは分からないのだが、望が雄介の事を気になり始めたのは多分そこからだろう。 それから雄介と付き合い始めて恋人といると心の温かさを教えてもらって気付いた時には本当に雄介の事が好きになっていたのかもしれない。
そして雄介と恋人同士になって色々と教わってきているような気もする。
恋人といると楽しい気持ちになってくる。
幸せという気持ち。
後は温もりだろう。
それは雄介に対して望が初めて思って言った言葉だった。
そう思ったからこそ雄介にはそう言えたのであろう。
だから望にとって雄介の存在は大きかったのかもしれない。
もし雄介と出会わなかったら!?
この気持ちさえも分からないまま仕事だけを続けていたのかもしれない。
その後、望は急いで準備をすると車で出掛ける。
あれから一週間後。
離れてからは本当にお互い連絡もとっていない状態の雄介と望。
そう望は自分からはそんなにメールはしない性格で雄介の場合には自分でそういう状況にしてしまったのだから望に連絡する事が出来なくなってしまったという事だろう。
だから逆にそれが良かったのかもしれない。
そう望は雄介がいない日々と同じ毎日を送る事が出来ているのだから。
なんも変わらない平凡な毎日。 だが仕事だけはいつもと変わらずに忙しかった。
それが逆に雄介の事を忘れさせてくれていたのかもしれない。
仕事を終わらせると望はいつもの部屋へと戻る。 そして書類やパソコンに目を通していた。
部屋内にはただただ望のため息と書類等を捲る音だけが響く。
望の隣で仕事をしている和也だってさっきから望のため息しか聞いていない。
「……ったく。 望って本当に分かりやすいのなぁ」
「何がだよ……」
和也の言葉に反応はするものの何だかこう何も考えていないような感じの望。
そうどこかこう気が抜けているような感じだ。
「だからさぁ、雄介と別れてからの望だよ」
「別にー、変わった所はあまりないだろ? 今回はちゃんと仕事はしてるんだしさぁ」
「まぁ、確かにそこはそうなんだけどさ。 でも、こう気が抜けてるって感じが俺には伝わってくるっていうの?」
「そうか?」
そう返事のようなめんどくさいようなため息に似た感じとでもいうのか、その返事の仕方に和也までも気が抜けてしまいそうな気がして仕方がない。
とりあえず望の事は放っておいて自分の仕事を始める和也。
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