　初めて雄介が望の家を見たときに大きい家だっていう事、初めて望と喧嘩したのも望の家だったっていう事を思い出す。

　何でこんな形で別れなきゃならなかったのであろうか。

　雄介だって望にちゃんと話をして別れる予定ではあったのだが、本当に望とあの食事をしてからというもの望とは全然会える機会もなかった。　だから望にこの事について話す事さえも出来なかったのが、どうしても悔いが残る所だ。

　そうだ最後に話をした時にだって何となく喧嘩状態みたいな感じになってしまい、それからまた会えなかったのだから雄介の心だってきっと晴れてはない。

　雄介は暫くその場で思い出の望の家を眺めていたのだが、もう早く行かないと今日中に着けないと思い車へと乗り込む。

　しかも望には何も告げないままだ。

　雄介が望に何も告げないで勝手に引越ししてしまったその日の夕方。

　望は仕事を終えて家へと帰宅してくる。

　いつものように自分の家の門の所まで来ると門を開けて車を庭の方へと向かわせ車をガレージの方へと移動させると、今日はいつもと違う感じがするのは気のせいなのであろうか。

　二台分の車のスペースに車が一台しかない。　寧ろ望の車しか無いと言った方が正しいのかもしれない。　そうだ、ここには雄介の車が無いという事だ。　しかも雄介の車と望の車とが隣同士で置いてあった筈だ。　だが今日は珍しく雄介の車がない事に気付く。

　前に雄介は言っていたのだが、雄介は車があるのに自分では殆ど利用しないような事を言っていた筈なのに今日は本当にその車がない。

　そうだ仕事場まで近いからといって使ってなかった筈だ。

　まあ、今日は雄介にしては珍しく遅刻でもしそうになって車で行ったのかもしれないと思いながら望はガレージを後にする。

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