　さっきまでは雄介だって隣というのか近くに恋人はいた。　だけど雄介が望に隠し事をしているのがバレてしまい今は喧嘩状態になってしまっている。　だから雄介の隣には望がいないという事だ。

　今は仕方ないとしよう。　そこは雄介自身が悪いのだから。　だけど家に帰ってからどうすればいいのであろうか。

　そうだ。　一番いいのは雄介が望にちゃんと話をする事だ。　もし話さないでいたのなら、このままずっとこの状態なのかもしれない。　だけどもしかしたらその事を望に話をしても喧嘩状態が続くということもあり得る。

　でも『望に話す』の方はまだ試してはいない。　そうだ雄介自身の判断であくまでそう思っているだけなのだから。

　もしかしたら望が雄介に向かって「電車で帰って来い」と言ったのは雄介に考える時間を与えてくれたのかもしれない。

　確かに考える時間はあった。

　家に帰宅するまでここからなら多分三十分はある。

　その間に雄介は考え事をまとめて帰宅して来てそれを話してくれるのかもしれない。　とでも望は思っているのであろう。

　雄介は人通りが多い中一人歩みを止めて空に向かって息を吐く。

　もう、そうだ。　選択肢というのは一つしかない。

　望に『異動になった』という事を帰ったらきちんと話そう。　もしかしたら何か勘違いをしているのかもしれないのだから。

　そう決めると雄介はまた歩き始める。

　家に帰宅したらちゃんと望に言う。　という決断をしても未だに迷い続けているようだ。

　雄介とはそういう性格だ。

　いいように言えば優しすぎる男性。　反対に言えば決断力の欠けているという事だろう。

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