【ー天災ー】22
雄介は今その携帯をベンチへと置き望に返信しないままため息を吐く。
今日は何時間ここに座って考えていたのであろうか。
外はもうさっきのグラデーション色がなくなり始め既に暗くなってしまっている。
せっかくの望との貴重な時間さえも刻々と過ぎていくだけだ。
「はぁ……もう、考えても埒がアカンのは分かっておるんやけど……」
やはり約束の場所に向かうのはまだ気が重い。
確かにこのまま望にその事を黙っていても言わなきゃならないのは時間の問題で早く言ってしまった方が気が楽なのかもしれないのだけど。
だがこの事は自分の中ではモヤモヤとしている。 そう簡単に望に言える筈もない問題でもあるからだ。
ベンチに置いておいた携帯がまた震え出す。
きっとまた望からだろう。
やはりメールの主は望からだった。
『もう、とっくに仕事終わってるんだろ? 先に食っちまうぜ』
そうだ今日は望と前々から外で食べる約束をしていた日だ。 覚えていたようで覚えてない。 いや覚えていたようで覚えてない。 もう雄介の中ではどうしたらいいのか? 本当に今は何も考えがまとまってないようだ。
場所は東京の都心にある展望レストラン。
雄介は約束事というのは守る男だ。
しかもこれだけ望から催促のメールが来ているのだから向かうしかないだろう。
とりあえず重たい腰を上げると駅へと向かう。
今さっきまでいた場所は本当に静かで人通りもあまりなかったのだが、駅に向かうにつれて人は多くなってくる。
みんな今時間は仕事帰りなのであろう。 人々はみんな家路に向かっている時間なのに雄介はこれから都心部の方に向かう所だ。
電車に乗って数十分。
駅を降りると足早に望と約束しているレストランへと向かう雄介。
都心部の方は先程の駅とは違いこりゃまた人が多い。
歩道は人が通れない位の人がいる。
雄介はその間をぬって望との約束があるレストランへと向かうのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます