【ー天災ー】20
だからその事に関して触れて欲しくはないのであろうと感じた坂本は雄介に向かい『お疲れ様』と言ってその場を後にする。
とりあえず早く動かないと、また他の誰かに「まだ、お前残ってるのか?」と言われるのは時間の問題だ。
とりあえず雄介は着替えて仕事場を後にするのだが、足はやはり望の家には向いていない。
こうただただ道を何も考えずに歩き回る。
今はまだ午前中。
何処を彷徨いながら歩いていたのか分からないのだが、気付くと川沿いのサイクリングロードを歩いていた。
平日の昼間というのは人はまばらだ。
きっとこれが土日の昼間だったら川沿いの広場で野球やサッカーをやっている少年達がいるのであろうが今はそれもない。
だから余計にシーンとしているのかもしれない。
聞こえてくるのは川を流れる水の音と電車が橋を渡る音だけだ。
そして雄介はそこら辺にあったベンチへと腰を下ろす。
昨日から今日にかけてもう何回ため息を吐いただろうか。
しかも完全な寝不足。
きっと今の雄介は目は真っ赤だ。
いや仕事で夜寝れないのはしょっちゅうなのだが、それでも今回の事についてはいつもとは違う。
精神的にも体力的にも疲れているのかもしれない。
だから疲労が蓄積しているのであろう。
それから雄介は暫くそこで考え事をしていた。
ずっとずっと雄介の頭の中にあるのは昨日の『異動』の事だ。
何回考えてもいい答えは出ない。
その間にも時間は過ぎていく。 そして望の家にも帰れない状態が続いている雄介。
でも今日は望と外で夕食をするという事になっている。
だから望の家に帰ってもいいと思うのだが、それでもなかなか腰が動かない雄介。
もうここで何時間もボッーとしていた。
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