　雄介は耳を澄ませ聞き耳を立てると今度はその声がハッキリと聴こえてきたようだ。

「……何処に居るん？」

　雄介はその助けを求める声に答えようと優しい声で掛けてみる。

　すると雄介の声が聞こえて来たのであろうか。

「……ココ」

　そう幼く男の子の声が確かに雄介の耳へと聞こえて来たのだが、今いる場所は伝えて来てくれていない。

「ココだけじゃ、分からへんのやけど？」

　雄介はその子供に話し掛けながら子供の事を探し続ける。

「怖いよー……早くー！」

「おう！　分かっておるってっ！」

　未だに声しか聞こえて来ない状況で雄介は探して続けていた。

　きっとこれが大人なら居場所を言ってくれるのであろうが子供はその場所が分かってないのかもしれない。

　そうこうしているうちの背中にしょっているボンベの警報音の音がさっきよりやや大きくなってきていた。

　兎に角、子供の声まで聞こえてきている中で自分だけ先に下に降りるという事は出来ず雄介は警報音が鳴ってる中でも子供を探し続ける。

　子供部屋の前には『◯◯君の部屋』というプレートまで溶けその場に落ちていた。

　雄介はその部屋を一応見てみるのだが、やはりこの部屋にも人の気配はない。

　いやもしこの部屋に居たとしても、あんな元気な声が出る訳もないだろう。

　そういやよくよく考えてみれば、この火の海の中ではかなり元気な声だったようにも思える。

　この火の海の中にいるのだから、もうちょっと声が掠れていてもおかしくはない筈なのに、そんなに掠れているって程の声ではなかったようだ。

　それにそんなに咳き込んでいるって様子もなかったようにも思える。

　だがもうさっきまで聴こえていた声が聞こえなくなってしまったのは気のせいであろうか。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい