　そう笑顔で坂本に答える雄介なのだが、坂本からしてみたら今日の雄介はいつもとは違い様子がおかしいのは手に取るように分かる。

「お前、少し休んでろよ」

「そういう訳にはいかんやろ？　消防はチームなんやからな」

　雄介は体を起こすと再び訓練を始める。

「……確かにそうなんだけどさ」

　そう心配する坂本だったのだが、いつもの雄介に戻ったような気がして少し安心した直後、消防署内に警報器が鳴り響く。

「要請があったみたいやな」

　今まで考え事をしていた雄介だったのだが、急に真剣な眼差しになると体を正すのだ。　たまたま訓練をしていたのだから、これは幸いだったのかもしれない。　防護服は着ていたのだからそのまま消防車の方へと乗り込み現場へと向かう。

　現場に向かうにつれ、その周辺は煙臭さで鼻や目までも刺激してくる。

　火災が起きているマンション周辺にはビルや建物も多く二次災害になる危険性があった。

　消防車が現場へと辿り着くと、そこは最近当たり前になってきている高層マンションだ。

　そのマンションの十階辺りから火が上がっていた。　現場には、そこら中の消防車が既に来ていて、もう消化活動も始まっている。　それでも未だ火の衰えを感じない位だ。

　流石はこれだけの火事だけあって現場周辺は騒然とし、報道と野次馬と警察と消防と救急車。

　現場はそれらの人達でごった返していた。　ここまでくると相当大きな火事という事が分かる。

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