【ー記憶ー】34

 雄介にも仕事がある。 雄介の方も望同様に人の命を預かる仕事だ。 やはり雄介の方も睡眠は欠かせない仕事なのだからプライベートに時間を取られている暇はないとでも思ったのかお風呂へと入るのだ。




 数日後の夕方。


 雄介はこの前、望に言ったように望が働いている病院の方へと足を向ける。


 望が勤務しているのは春坂市にある春坂総合病院。 この地域では大きい病院で外来用の駐車場と職員用の駐車場があって望達は職員用駐車場の方に車を止めていた。 勿論、仕事が終わってから出てくる玄関だって外来患者とは違う所にある。 病院の正面入口の反対側にあるのが職員用出入口だ。


 前の時には望が雄介が働く消防署の方に足を向けていたのだが、今日は雄介が望の事を迎えに来ていた。


 夕闇のなりかけの十八時半。


 だが、まだまだ望が出て来る気配はなくオレンジから黒色へと変わっていくグラデーションな空を見上げる。


  その時だっただろうか次から次へと職員が仕事を終わらせ出てきているのか、雄介はそちらの方に視線を向けると、その人々の合間に雄介が知る人物が出てきたようで雄介はその人物達に向かい手を振り、


「よっ!」


 そう言いながら雄介は望と和也の側へと向かうのだ。


 その雄介の姿に最初に気付いたのは和也で、


「あ! 望!」


 そう和也は望のスーツの裾を引っ張りながら雄介が来ている事を知らせる。 それと同時に望は雄介の方へと視線を向け、


「……へ?」


 望は和也に言われて、和也に言われた方へと視線を向けると、そこには雄介の姿があった。


 それに気付くと、望は足早に雄介の元へと近付いて行く。


「お前……何でここに?」

「この前、会いに行くって言ったやろ?」

「あ、ああ、まぁ、確かにそうだけどさ。 え? あれ? お前、そういや、ここまでどうやって来たんだ?」

「え? あ、まぁ、走ってやけど」

「雄介は車は持ってねぇのか?」

「それは、流石に持っておるんやけど、家から仕事場まで近いし、ここまでもそんなに遠くはないしな。 せやから、最近は車使ってへんかな?」

「そうだったのか」

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