【ー記憶ー】33

 それは本当に今望が雄介の事を好きな証拠。


 こうなんていうのであろうか。 嬉しいような恥ずかしいような気持ちが込み上げて来ているのかもしれない。


 確かに毎日会えるのは嬉しい事なのだが、雄介の体に負担が掛かってしまうのではないかと心配になる。


『でもさ……仕事が終わってからだと疲れるだろ?』

「ん? あ……まぁ、そこは、心配せぇへんでも大丈夫やって。 俺がやってる仕事は元からが体力勝負なんやで、せやから、望と会う位の体力位は残っておるしな」

『そうか』

「これで安心出来たか?」

『ああ、まぁな』

「ほな、また明日、絶対に会いに行くし、待っててな」

『ああ、分かったよ。 じゃあな』

「おやすみ、望」

『ああ、おやすみ』


 そう言うと二人は同時に電話を切るのだ。


 雄介は電話を切った後に安心したのか安堵のため息を吐く。


 そう今の話では望は雄介の事が嫌いになった訳ではなさそうだったからだ。


 望の事を雄介が抱き締めた時に拒否した理由も分かった。


 そう恋人の温もりを覚えたくはないからだ。


 雄介とは仕事が忙し過ぎて頻繁に会えないという事から雄介との思い出を体に残しておくと逆に辛くなるという事かららしい。


 それを聞けて雄介の方も安心出来たという所だろう。


「そういう事やったんか……」


 そう本人の口から聞くと、余計に愛しさが増したようだ。 望と電話する前とは違い、今では微笑んでいるのだから。


 雄介は今の望との会話で心が温かくなったのであろう。


 雄介は暫くさっきの望との会話を思い出してボッーとしていたのだが、フッと時計を見上げると、時計の針は十二時を差しているという事に気付き突然体を起こすとお風呂へと入る準備をするのだ。

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