【ー記憶ー】26

「そうか……ま、なら、仕事終わらせて掃除して帰ろうぜ!」

「ああ、まぁ……そうだなぁ」


 そう答える望の声がいつもに増して低いような気がするのだが、多分、明日にはまたいつものような元気な望の姿を見せてくれるだろう。


 そうそれは和也が今日望の為に動くからだ。


 和也も望も仕事を終わらせると、今日は駐車場で別れる。


「んじゃあ、また、明日なぁ」


 和也は望に向かって元気よく言うのだが、


「ああ」


 望はいつも以上に暗い声が返って来た。


 そこは気にせずに和也は車へと乗り込むと、今日は自分の家の方向ではなく雄介の家の方向へと車を走らせる。


 和也は雄介の家は知らなかったのだが、今日こっそりと病院内で調べておいた所だ。


 雄介の家の近くというのは住宅街なのか繁華街に比べると本当に静かな所でもある。 住宅街の灯りとポツンポツンと街灯だけがあるような所に雄介の家はあるようだ。


 和也は雄介の家の近くに車を停めて雄介が住んでいるであろうマンションの部屋を見上げるのだが、どうやら雄介はまだ帰宅してないらしい。


 和也はまるで刑事ドラマの刑事のように雄介の家の近くの道に車を止め、車の中で雄介が帰宅してくるのを待つ。


 そうだ雄介の部屋の灯りが点けば雄介が帰って来たと言う事になるからだ。


 現在の時刻は夜の二十一時を回った所。 だが雄介が帰宅してくる気配がまだない。


 和也は雄介が帰宅するまで待つという覚悟で来てるのだから先程買った缶コーヒーのプルタブを開けて飲み始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る