【ー記憶ー】22

「分かったよ。 今日、帰ったら、電話してみる」

「ああ、頑張れよ。 よし! 掃除終わり! 帰ろうぜ!」


 和也は掃除用具を用具入れにしまうと望の背中を勇気付けるさせるように叩くのだ。 背中を叩かれた望は体をビクリとさせる。


 それと同時に望の鼓動が早くなったようだ。 だが、その胸の鼓動は恋をした時の胸の高鳴りではなく、きっと望から雄介に連絡を入れるというプレッシャーで胸が高鳴ってしまっているのかもしれない。 望は自ら人に連絡するようなタイプではない。 仕事上では全くもってそういう事は関係ないのだが、プライベートというのか恋人関係の話では望自ら相手に連絡を入れるタイプではないからなのかもしれない。


「あ、ああ……」


 そう和也に答えるものの既に声は震えていた。


 部屋の扉の鍵を閉めると、二人で病院の駐車場に向かい望と和也は別れる。


 望は一応、和也に相談したからなのか晴れ晴れとした気持ちでいたハズなのだが、いざ帰宅してから雄介に何度も電話をしようとしても、どうしてもなかなか体が思うように動かないでいるようだ。


 携帯のボタンを押すだけなのに、それでも体が言う事を聞いてくれそうもない。


 帰って来てからリビングのイスに座って約三十分も携帯の画面を眺めているだけを繰り返していた。


 その時、持っていた携帯が急に震え出す。


 いきなり震え出した携帯にビックリした望だったが、それは着信ではなくメールであることを示していたのだ。


 携帯の画面にはメールマークが点滅している。 しかし今時間に誰なのであろうか。

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