第34話

食堂スペースで一悶着あった後、また絡まれたら堪らないと直ぐに借りてる部屋に戻ってそのまま寝たんだけど……


「なんでアレーネさんが同じベットにいるの……」


ちゃんと別々のベットで寝たはずなんだけど。


(途中で起きたアレーネ様が自分からマスターのベッドに潜り込んでいきました)


まぁ、悪い気はしない。なんだったらもう少しぐらい堪能しても、と思わなくも無いけど。

冷静に見たらアレーネさんじゃないな。


「で、沙希さんや何時までアレーネさんのフリを続けるつもり」


ベットに潜り込んできて、寝ているアレーネさんに向けてそういうと、アレーネさんの輪郭がブレて、姿がどんどん別人に変わる。


最終的に身長140cm程度で白髪ツインテール、紫色の瞳、身長にしては大きめな胸をした少女の姿に変わる。


実際は俺と同い年の同級生だけど。


「勝吾が元気そうでなにより」


「沙希も元気そうで良かった。それにしても質量の有る幻覚なんていつの間に使えるようになったの?」


地球にいる時から幻覚を利用して他人に化けたりはしてたけど。

触られると、触ることが出来ずにすり抜けちゃうから直ぐにバレちゃうって弱点があったはずなんだけど。


さっき幻覚を使ってアレーネさんに化けてる時に普通に触れたんだよね。しっかり体温も感じたし。


「〈ミラージュ〉っていう私がこの世界に来た時に貰ったスキル。このスキルで作り出した幻覚は質量を持っている。幻覚と言うより複製や再現と言った方が正しいかも」


固有結界による心象風景の具現化みたいなもんか……

既にチートな沙希にそんなスキル与えちゃダメでしょ。


「〈ミラージュ〉か沙希なら使えこなせそうだね」


「多分、勝吾の方が使うのが1番強かったと思う。〈ミラージュ〉で刻印術で効果を付与した武器を複製すれば弾切れを心配する必要ない」


「〈ミラージュ〉で複製した物も刻印術発動するんだ?」


「魔力は消費するけど。刻印術だけじゃなくてルーン魔法も複製できる」


そう言って、沙希がルーン魔法を発動させて指先に小さな火球を出現させる。

そしてルーン魔法を発動させずに火球を増殖させて見せた。


「勿論、全部触れるとちゃんと熱い。それにルーン魔法で、この数の火球を出すより余っ程楽で早い」


そう説明してから。沙希は、自分の周りに浮かぶ火球を消した。


「完全にチートスキルだね」


「〈魔導知能〉程じゃない。アレの方がよっぽどチートスキル」


まぁ、否定はしない。魔導知能超便利だし。


(そんなことより。2人してナチュラルに服を脱ぎ始めないでください。アレーネ様が顔を真っ赤にしながら、必死に寝たフリをしていますよ)


そうだった。部屋にはアレーネさんもいるんだった。


人に見られながらする趣味はないし今日は止めておこう。


沙希はムゥ〜って顔をしてるけど。

沙希も他人に見られながらする趣味なんてないので、脱ぎかけてた服を着直す。


「それにしても、いつの間にグラフェンに到したの?」


「昨日の夜」


約2,000kmの距離を大体7日程度で踏破してきた訳か。

2,000kmってのは直線距離でって話で実際はもっと離れてるって話だったっけ。

一日の半分以上の時間を移動に費やしてたんじゃないの?


と言うか夜に到着したって言うなら、なんで村の中に入れてるの?

夜は門が閉まってるはずなんだけど。


「門閉まってなかった?」


「うん。だからこうひょいっと」


ジャンプして飛び越えて入ったと……

つまり不法侵入中ってことね?

沙希が目立たないような姿をしてれば問題ないけど。

異世界でも白髪ってのは珍しいみたいだし。


「沙希、今すぐバレないように一旦外に出て正規の方法で村に入り直して。絶対、面倒事になる」


「外に同行者を野宿させてるから最初っからそのつもり。その前に、これ渡しとく」


そう言って何時ぞやのコスプレ大会で来た執事服を手渡して来た。


「これ、持ち歩いてたの?」


「着れる機会があったら来てもらおうと思って」


沙希はルーン魔法で、異空間を作り出して倉庫代わりに使ってたからな。

異世界からでも、その異空間にアクセスすることが可能なので、異空間に仕舞ってあったものなら、好きに取り出せるって訳だ。


まぁ、沙希が今着てるゴスロリ系の服には劣るけど。刻印術で、それなりに強化してるからなその執事服。


因みに沙希が来ているゴスロリ系の服は最高級の素材を使って核ミサイルの直撃も無傷で耐えれる。地球にいた頃なら最強クラスの防具だったりする。


流石に修学旅行中に制服以外の服を着る訳には行かなかったから、異空間に仕舞ってあったあった訳だ。


運がいいのか悪いのか……

もし、制服じゃなくて、このゴスロリ系の服を着ていたら死んでこの世界に連れて来られることも無かっただろう。

制服は普通の布製だから、刻印術で強化はしてあったけど。

精々、拳銃を防げる程度の防御力しかなかったからな。


取り敢えず。この執事服はありがたく使わせてもらおう。

今の布の服と比べて性能は段違いだし。

気心地も良いから。




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読んで頂きありがとうございます。


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