第7話
(ここでお金を手に入れていた方が、街にはいる時に怪しまれないので、この村に売りに来たのですが失敗でしたね。申し訳ございません)
それなら仕方ないか。
かなり買い叩かれても良いから売ってしまおう。
街の入場料だけでも確保出来ればこの村には一生来ないわけだし。
(悔しいですが、そうですね)
「わかりました。ご自由にどうぞ」
そう言うと、村の人達がまた村の中に帰って言って、60歳ぐらいのバーさんを連れて帰ってきた。
「食べても問題ないけど。鮮度がいいとは言えないね」
やっぱりそうなるか。
「そうですか……で、いくらぐらいになるんですか?」
「10,000ゴルドってところだな」
ゴルドっていうのはこの世界のお金の単位で、1ゴルド=1円と考えていいと、魔道知能に説明された。
1万も手に入るなら悪くはないかな?一瞬思ったけど。約800kgの猪、丸々一頭の値段って考えると、すげぇ買い叩かれてる気がする。
魔物もいるし肉の確保手段も多いだろうから、猪自体売ってもあんまりお金にならない可能性もあるけど。
この世界の物価とか知らないしな。
(通常の10分の1以下ですよ。カードでドロップする魔物の肉は基本100g程度の量なので、魔物の肉だけで肉の需要は満たせませんので、猪の肉もそれなりの値段でうれますし、毛皮も売れるので)
そっか。10,000有れば、大きな街にも入れる?
(問題ありません。街ごとに少し違いはありますが、基本数百ゴルドなので)
ならいいや、早くここから離れたいし。それで売っちゃおう。
「わかりました。それでいいです。支払いは銅貨10枚、銀貨9枚でお願いします」
銅貨は1枚100ゴルド。
銀貨は1枚1000ゴルドだ。
お金を受け取りさっさと村を後にした。
色々思うことはあるけど。そんなことを気にしている余裕もない。
今日、野宿できるところを探さないといけないし。
そういえば、俺も鑑定スキル使えるんだっけ?
鑑定スキルって人を鑑定することは出来ないの?
スキルを調べるには教会に行かないといけないって事はそうなんだろうけど。
(そうですね。人どころか生き物には鑑定スキルは使えません、死骸には使えますが)
不便だなと思わなくもないけど。そのおかげで、俺がヒューマンスライムだと鑑定でバレることがない訳だし。
都合がいいとも言えるんだよね。
(マスター。進行方向から少し外れますが、魔鹿を発見しました。ご飯確保のために倒しに行きましょう)
魔鹿というのは普通の鹿が体内に一定以上の魔力を取り込むことで、魔物化した鹿だ。
確かにこのままだと、夜ご飯無しになってしまう。
それは嫌なので、魔導知能が見つけた魔鹿のいる場所に向かった。
何かすっごい禍々しいんだけど、あれの肉って食べて大丈夫なの?
魔鹿は紫色の毛皮をしていて、血管みたいなものが張り付いてドクドク脈動してる。
(寧ろ美味しいそうですよ。私はスキルなので食べたことはないですけど)
そっか。美味しいなら良いか。
元は草食動物なのにやけに好戦的な魔鹿との戦闘が始まる。
(今までの敵としていちばん強いので、油断はしないように注意してください)
魔導知能が態々注意するってことは、本当に注意した方が良いってことだろう。
と言っても、俺には身体強化して棍棒で殴る以外に出来ることは無いんだけど。
いつも通り身体強化を使って魔鹿に接近する。
今までの相手は身体強化した速度について来れなかったんだけど、魔鹿は余裕でこちらの速度についてくる。
棍棒の攻撃を角でガードしてきた。
そのまま棍棒と角で鍔迫り合いになるかと思ったけど、あっさり力負けして後方に吹き飛ばされてしまう。
(マスターは魔力量ゴリ押しで身体強化をしているとは言え、魔力量以外のステータスは一般人ですので、よっぽどの雑魚魔物じゃなければ、基本魔物の方が身体能力は上です。ボサっとしてると追撃されますよ?)
まぁ、今の俺のレベルは1だもんな。
バッと顔を上げると魔鹿が角でこちらを突き刺すような体勢でこっちに突進してきている。
避けるのは間に合わないだろうし、棍棒をフルスイングして突進を止めようと試みる。
突進を止めることはできたけど、棍棒は砕けてしまい。俺は更に後ろに吹き飛ばされてしまった。
すごい勢いで後ろに吹っ飛んでしまったけど木にぶつかって止まった。
木に勢いよくぶつかったにしては、痛くないな。
(この世界の生き物はHPという名の結界で護られてます。HPはレベルを上げることで耐久度を上げることが出来ます)
勢いよく木にぶつかったのに大して痛くなかったのはHPが肩代わりしてくれたってことか。
と言うか、ゴブリンってマジで弱かったんだな。
ゴブリンを一撃で倒せたから魔物相手にもそれなりに戦えると思ってたんだけど…
ちょっと調子にのってたな。
「正直、この程度魔法とは言えないレベルだし、使うつもり無かったんだけど。そんなこと言ってる場合じゃないか」
自分の中の魔力を指先に移動させて、ルーン文字を書く。
「爆ぜろ」
ルーン文字が魔鹿に向かって飛んでいき、魔鹿の顔の前で強く発光したのと同時に爆発する。
と言っても爆竹程度の威力なので、魔鹿にダメージを与えることは出来なかったけど。
まぁ、驚かして動きを止めるぐらいの効果はあった筈だ。
俺の才能じゃ一文字分の魔法陣しか作れないからな。
せめてルーン文字を二文字組み合わせた魔法陣を作れたら今の爆発で倒せてたんだろうけどな…
ルーン文字1文字で発動するルーン魔法は子供だまし程度の威力だからな。
恥ずかしくて魔法が使える何て言えないレベルだ。
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