第4話

そもそも、なんで猪なの?他にも村で換金出来るもの有るんじゃない?


(村レベルになると食べれるものが一番喜ばれます。それに見知らぬ男を村の中に招き入れるのはリスクのある行為です。少しでも村の中に入れてもらう確率を上げるために猪が必要なんです)


成程。村って閉鎖的そうだもんな。


交渉次第では、換金することは出来ても村の中には入れて貰えず。

結局、村の外で野宿する羽目になる可能性もあるのか。


交渉とか得意じゃないんだけど…

ダメだったら野宿するしかないか。

魔導知能に見張りをしてもらえば、寝ている間に襲われることもないだろうし。


(マスターが家で眠りたいと言うので、村の中に入る想定で話を進めていますが。

村の人間が安全とは限りません。ヒューマンスライムとバレたら100%捉えて奴隷商に売り払おうとするでしょう。マスターの安全面を考えると、村の外で取引をして野宿をする方が安全です)


思ったよりハードモード?


まぁ、人なんて知能がある分、一番信用出来ないか……

地球にいる時も散々命を狙われたしな。

正直、一番最初に俺に接触してきたのが沙希の勢力じゃなければ、今頃俺は人の形をしていなかっただろう。


だからこそ、もう俺の事を婚約者だなんて思ってないかもしれないけど。

一度、沙希と合流して恩返しがしたい。


(マスターの第一目標は沙希様との合流ということですね?)


そうだね。だからと言って何処にいるの分からないし、先ずは自分の生活の地盤固めに注力するけどね。


沙希はスキルなんてなくても魔法が使える。心配しなくても自由にやってるだろうし。


沙希のことより自分のことを心配しないとな。


沙希なら案外魔法を自由に使えるこの世界に来たことを喜んでそうだし。


地球では大っぴらに魔法を使えなかったし。


(マスターが沙希様に絶対の信頼を寄せているのはわかりました。ですが、沙希様は私のようなこの世界の常識を教えてくれる存在がいないはずです。万が一と言うことも有るのでは?)


確かにそれもそうか……


いや、常識が無くても沙希なら問題ないだろう。


それならそれで、上手くやるだろう。


それにその気になれば、一人で国と戦争できるレベルの強さだし。


こっちの世界はスキルがあるけど。

地球にだってミサイルとか戦車とか現代兵器がいっぱいあったし。

沙希があっさり殺られるってことも無いだろう。



(マスターが、そこ迄言うなら先ずはこちらでの生活基盤を整えることにしましょう)


まぁ、沙希が俺と合流する気ならあっちから接触してくる筈だし。



(マスター。猪ではありませんが、紙で出来た鳥がこちらに向かって来ます。どうしますか?)


思ったより早かったな。

あれは材料の紙に魔力を込めた人のところに向かって飛んでいく伝書鳩的な沙希の魔法だ。

ちゃんと、沙希の所まで帰る機能もついてるから、コレで連絡が取れるな。


紙で出来た燕が俺の手に止まると、一枚の紙の状態に戻る。

紙には文字が書かれてて、そのまま手紙になるってことだな。


(沙希様もマスターと合流したがっているようですね。こう言う連絡手段が使えるなら思ったより早く合流することが可能そうですね)


沙希も俺と合流したいって思ってくれてたのは嬉しいけど。近くにいるかってのは……どうだろうね?


この魔法、地球上ならどれだけ離れていても発動したし。

酷いと数千kmレベルで離れている可能性もあるし。


先ずは、返事を返すか。そうだ!分体をもう一体作るから魔導知能に後をつけて貰えば、沙希が何処にいるのか正確な位置が把握できるな。


魔導知能が同時に分体を操作して、全く違うことさせることができる前提だけど。


(そう言うのは寧ろ得意分野です。マスターから離れすぎると、魔力が供給されなくなってしまい、分体は消滅していまうのですが。事前に大量の魔力を込めて貰えば問題ないかと)


それなら早速、返事を書いて沙希のところに帰って貰うか。


取り敢えず手紙は沙希が無事で良かった事から始まり、俺も合流したいから分体をそっちに飛ばした、敵じゃないから攻撃しないでと分体の事を説明する文章で締めくくった。


なんか、婚約者に書く手紙の内容じゃないなとは思うけど。こんな状況だし仕方ないだろう。


手紙を書き終わったら、新たに分体を作り出して、魔導知能に制御権を渡して兎に角魔力を込める。

魔導知能にこれぐらい有れば大丈夫ですと言われた倍注ぎ込んだので、不測の事態があっても大丈夫だろう。


(最後にマスターの記憶を閲覧する許可を頂けますか?沙希様のお顔を把握しておいた方がいいと思うので)


シンプルに思考を読んで来るから、俺の記憶も見れてるかな?って思ってたんだけど。

それは無かったか?


……記憶も見れるなら、沙希が魔法使いってのもわかるし。

沙希様が心配じゃ無いんですか?って質問はしてこないか。


まぁ、記憶の共有はしておいた方が良いだろうから許可する。


(有難うございます。……あそこまでイチャイチャしてて、世界も違うし親が決めた婚約者何て関係ないって言われるかも何て心配していたんですか?)


結果。魔導知能に呆れられてしまった。

俺だって最初は距離感が掴めなくてギクシャクしてたけど、最近は上手くいってたと思ってたけど。

やっぱり、心配じゃん。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る