『またね』と言う名のおまじない

星光かける

第0話 出会い


「姫乃君、入って来なさい」

「はい」


 ある日、僕は君と出会った。


 二重のパッチリと開いた目、スラッと伸びた鼻、薄いが程よく紅い唇。それは誰がどう見ても美人と言う顔だった。


「今まで病気で入院してましたが、今日から学校に通える事になった姫乃凛です。よろしくお願いします」

「三宅の隣の席が空いていたな。そこに座ってくれ。一番右後ろだ」

「はい、よろしくね」

「よろしく」




 次に会話をしたのは夜の公園だった。


 コンビニに行った帰りに歩いていると、君が一人でベンチに座って月を眺めていた。見た目も相あいまってかどこか近づきにくい雰囲気だったのは、気のせいではないだろう。


 だが、僕はそんな事は気にも止めず、ただ純粋な興味だけで話しかけた。


「どうしたの?こんな時間に」


 振り向いた君は今にも泣きそうな、しかし愛想笑いをしている様な、色々な感情がごちゃ混ぜになった表情をしていた。


「家に居てもつまらないから出て来たの」


 と君は言った。


 これが君が僕についた一番最初の嘘だった。


 だけど、僕はそんな事も知らないで、格好をつけようとした。


「こんな時間に女の子が一人で出歩いていたら危ないよ?」


 と言った。すると君は、


「なら、君が私をどこかに連れ去ってくれるの?」


 と言って帰って行った。


 次の日から僕らは何も無かった様に学校でよく話す様になった。次の授業はなんだっけ?とか、教科書忘れたから見せて?とか。


 そんな普通の会話だったけど、それが楽しかった。だけど、僕はずっと、あの日の言葉が気になっていた。

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