第16話 妹と買い物
春川が俺をストーカーしていた日のあった週の土曜。俺は帰宅部に所属(?)しているため、土日は基本家に居る。
たまに隣合っている家の新卒の、今年企業に入社したばかりのお姉さんに頼まれて美久と一緒に犬の散歩に行っている。
彼女は、元々は両親と一緒に住んでいたらしいが、病死したらしい。俺たちの両親の様に事故死した訳では無いが、同じ境遇であるため、月一か2ヶ月に一回くらいのペースで遥輝も混じえて合計4人で夜食を食べている。
遥輝はかなり自由に生活しているが、見えない部分ではとても苦労している。だからこそ彼の両親も家の事以外で遥輝が自由に行動することを許している。
おっと。話がズレた。
散歩に連れて行っている犬の数だが、その数3匹。初期は本当にやかましく吠えてきたため、俺はうんざりしていた。
今はある程度懐いてくれたが、美久ほどは懐いてくれなかった。美久が行くと足元に集まるのに、俺の足元に集まるのは大抵、餌やりとか芝生で横になった時くらいである。
以上が、美玖との買い物ついでに散歩するはめになったあらすじである。あまり話してないが。
犬は太郎、二郎、三久とあう順の名前だ。なんで3番目は三郎とかじゃないのか不思議だ。しかも、太郎は太郎で、別に問題がある。
太郎は"メス"なのだ。
太郎、俺に1番敵愾心を向けてくる難敵だが、ネーミングされたそれに関してはさすがに涙を禁じ得ない。うっ……。
「お兄ちゃん。今日の夜ご飯何にする?」
「うーん、そうだな……無難にカレーにするか。」
「カレーか、確かに最近食べてないね」
「それに、余ったら次の日も食べれるからな」
「じゃあ、カレーでけってーい!」
ずんずんと、大股で歩き出した美久につられて犬たちも駆け出すが、あっという間に美久が引きずられる側に変わった。
美久は運動神経、中の下くらいだからな。なぜか長座と立ち幅だけ得意なんだよなあ。
俺はもちろん、高校では目立ちたくないので運動神経いいアピールポイントはしない。そんなことすんのもせいぜい中学まで、高校でして許されるのは遥輝を筆頭にイケメンだけである。
今日の美久は髪をひとつにまとめあげ、変装用の黒いキャップに入れてボーイッシュっぽい感じで外出している。
「今日はニンジン安い日だから尚更ちょうど良かったね!」
手に持ったチラシを見ながら、ニンジンの品定めをして美久が言う。俺には野菜の善し悪しが分からない……
でも……
「(別に食費は心配しなくていいんだがなぁ)」
美久に聞こえないくらいの小声でつぶやく。
美久にも言ってないバイトで貯金は溜まる一方だし。
カレーに必要なルーや玉ねぎなどを買った俺たちは、ついでにコンビニでアイスを買って帰った。
子犬たち?電柱に括りつけておいた。だってめっちゃ吠える。
スーパーでもコンビニでも周りに吠えまくっててしょーじき周りに申し訳なかった。
もう少しお前ら(子犬たち)、落ち着けよ。早く成長して、大人の余裕を持てるようになりな。
遥輝んとこの兄弟は無視しろ。アイツらは例外だ。あの体力バカと天然バカをハイブリッドさせたようなイケメンやろうはマジで大人になる気配がない。
まだ美久の方が手本にできる。家(俺)や親しい仲の者(俺とかね)とでは年相応の可愛らしい女子、たまに幼児化するけど、普段の学校生活は一般生徒の模範として過ごしてるくらいだからな。
俺のいもうとはやはり、世界一可愛い。
うりうりと、俺の右前をニコニコしながら歩く美久の頭を少し強引にでも優しさは忘れずに撫でると、少し驚いた表情を見せた美久だったが、直ぐにムフーっと頬を綻ばせより上機嫌な足取りになったのがわかった。
追伸:本日の美久との共同作業の賜物、カレーはめちゃくちゃ美味かった。今度食べるのはいつになるだろうか。(残ったカレーの分は俺が全部美久に許可とった上で食った)
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