第八十一話 引っ越し予定の賃貸物件

『家財道具の類いは何も残されていないのね?』


ペーターが警備隊と交渉して抑えてくれた賃貸物件まで、私とコレットとハイディとペーターで来ましたが。建物内はハイディの言う通り家財道具の類いが全て撤去されていました。


『詐欺の被害にあった人達への弁償に充てる為に警備隊が全て没収して、後で競売に掛けると隊長が話していたよ』


ペーターの説明に納得した私は、硝子グラース製の窓から外を眺めて見ましたが。


『何をしているの?。フローリアン』


ペーターの専属侍女でもあるコレットが、不思議そうな表情を浮かべながら何かを探している私に訊ねましたので。


『私が今暮らしている叡智ヴァイスハイト学園の学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムの男子寮からは、雪さえ降っていなければリューベックの中心にある時計台が見えるのですけれど。この賃貸物件からは角度的に見えないようです』


私の話を聴いたコレットとハイディとペーターの三人も、窓の近くに集まり揃って外の様子を眺めましたが。


『張り込みに使った中の下の宿泊施設ウンタークンフトが邪魔をして、時計台が見えないわね』


ハイディも時計台が見えなくて少し残念そうにしますと、優しい性格をしているペーターが。


『屋敷にあるボクの部屋から、魔道具の時計を持って来て居間に設置する事にするね。時刻が確認出来ないと不便だから』


リューベックで生まれ育ったペーターには、本当に助けられています。


『感謝をしますペーター。他に必要な家財道具の類いは、予算と相談して購入したいと思いますけれど、ハイディもそれで構いませんか?』


私の確認に対してハイディは頷きまして。


『ええ、それで構わないわフローリアン。生活するのに必要な家財道具を揃えてから、叡智ヴァイスハイト学園には学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムから市内の賃貸物件に引っ越すと連絡をしましょう』

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