ex Re 世界の平和を守る者として最悪な選択 下

 辛うじて固められていた覚悟と決意が、緩やかに融解していくのを感じた。


 これから行うべきだった作戦行動は、間違っても未成年の子供である風間に担わせる訳にはいかない。

 そして誰かを止める代わりに自分だけで前に出られる程の心の強さを自身が持ち合わせているのなら、そもそも風間の異変に気付く前に事を進めていただろう。


 つまりもう既に自分達は、対キリングドールとの戦いで正攻法を取る事が出来なくなっているのだ。

 少なくとも、自分の指揮下では。


 真実を知らなければここまでにはならなかったかもしれないという事を考えれば、知らぬが仏とはこの事かもしれないと篠原は思う。


「……分かった。少し無茶をしよう」


 否、知っていたからこそ自分達は最善の選択ができるのだ。

 とにかく……とにかくそう考える事にした。

 そう考える事にして……軌道修正する。


「赤坂に寄生しているアンノウンを無力化する。生け捕りだ。引き剝がす手段を考えるのはその後にしよう」


「は……はいッ! 了解っす!」


 風間の声に覇気が戻り、その表情はどこか安堵に満ち溢れているように思えた。

 それを見ていると、少なくともこの選択は一人の大人としては間違っていなかったのでは無いかと思える。

 部隊を率いる者としては、もうどうしようもないのだろうけど。


「……すみません、助かったっす篠原さん」


 これでいい。


「いや、お前の助け舟に俺が乗らせて貰っただけだ」


 ……これでいい。

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