ex 人間の子供

(まさか本当にキリングドールなんて事は……ッ)


 既視感はある。

 杉浦鉄平とユイの時も出現後に反応が消滅していたのが原因だろう。

 どうしても僅かな関連性で連想し、思考に纏わりついて来る。


 だがあくまで既視感を感じるだけ。


 あの時そうなったのは杉浦が特別だったからであり、恐らく赤坂ではその状況は再現されない。

 精神汚染にしても、別にキリングドールでなくとも同様の症状は確認されている事だ。


 とにかく状況的に既視感こそあれど、今目の前にいる赤坂伊月がキリングドールと接触したと断定できる証拠はない。

 そしてそもそも出現したアンノウンを倒すという事や赤阪を救い出すという今現在の目的の中で、相手がキリングドールか否かなんて事は気にする必要のない事だ。


 今はあまり深く考える時ではない。

 ただ赤坂の精神を汚染させているアンノウンを彼女から引き離して破壊すれば良い。

 ただ、それだけの事なのだ。


 ……そう、言い聞かせた。


(願わくば全くの見当違いであってほしいな!)


 そう、願った。


(もし相手がキリングドールだったとすれば、俺は……)


 果たしてキリングドールを破壊できるだろうか?


 アンノウン……否、デザイナーチャイルド。

 子供の容姿をしたアンノウンではなく、容姿通りの人間の子供。


 自分達の戦いが異世界との戦争なのだとすれば、その戦争の被害者とも言えるべき子供だ。


 もう、何も知らなかった頃とは違うのだ。


 そして思わず硬直してしまいそうになる篠原を置いて行くように、状況が動いた。


「ん? 二人共なんでそんなに険しい表情を──」


「閉じろ!」


 柚子がそう叫んだ瞬間、赤坂を閉じ込めるように箱状の結界が展開される。


「風間!?」


「ボサっとしてないで銃構えて! らしくないっすよ篠原さん!」


「あ、ああ! すまない!」


 言われるがままに篠原は二丁拳銃を構える。

 思ったように撃てるかどうかが分からない銃を。


 そして目の前の赤坂にも変化があった。


「いや、二人共本当にな──」


 言いかけた所で言葉を止め、慌てた表情が一瞬にして無表情なものとなる。

 そして次の瞬間には……怒りを表情に出して来た。


「ったく反応消して倒された事にする予定だったのによぉ……完全にバレてんじゃねえか役に立たねえなぁッ!」


 あまりにらしくない口調でそう叫んだ赤坂は懐から迷彩色の拳銃を取り出し……そして言う。


「無駄な戦闘はしねえ予定だったが仕方ねえ……試運転だ。消し飛べ」


 そして次の瞬間、引き金が引かれた。

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